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2006年「Webコラム一灯」

 ジャパネスクの華

2006/09/26

  公式サイトのイントロダクションにこんな文言がありました。「ようこそ、ニッポンが嫉妬するJAPANへ-」。最近DVDで鑑賞したハリウッド映画「SAYURI」は、スティーブン・スピルバーグ製作、ロブ・マーシャル監督による大作です。ヒロインは日本の芸妓で、彼女の波乱の人生をたどります。

 

  劇場公開時に既に話題になったそうですが、キャスティングが目を引きます。「さゆり」を演じるのは、中国人女優チャン・ツィイーですし、彼女のライバルには大物コン・リーが扮しています。ヒロインの後ろ盾となるのは、マレーシアのミシェル・ヨー、と実に国際色豊かです。

 

  脇を固める俳優は、日本から桃井かおり、役所広司、最近では米映画ですっかりなじみの渡辺謙らです。ニッポンの美をモチーフに、達者な演技をみせるのですが、台詞の1つひとつが英語で語られるのにはどうしても違和感が残りました。桜がはらはらと散る京の光景などまさに日本であり、考証もよく行き届いているとは思います。見事なジャパネスク、異国情趣に彩られた日本風で、島国の文化がかくも国際化したことには感慨をおぼえます。

 

  だいぶ以前、米国の地方都市を訪れて驚いたことがありました。かなり高齢の夫婦の家に招待されました。彼らが自慢げに見せてくれたのは、日本から取り寄せた檜風呂でした。日本旅行の際に体験した入浴、殊に木が香るバスタブに魅せられたそうです。味気ない西洋の風呂やシャワーに比べると、確かに日本人が入浴に費やすエネルギーとコストは大層なものです。そこには、“入浴文化”、カルチャーがひそんでいます。

 

  欧米人らの異国趣味、オリエンタリズムに触れると、気恥ずかしくなります。今の日本社会に、伝統の文化がどれほど浸透しているか、慈しまれているか。“純日本”の実体そのものが曖昧になっている気がします。恥をさらせば、この春に茶事を経験しましたが、正式の茶席は初体験で全く勝手が分かりませんでした。正座についてゆけず、往生したものでした。

 

  歌舞伎の11代目市川海老蔵襲名披露興行を歌舞伎座の一幕見席で鑑賞したことがありました。予約なし、低料金、昼夜入れ替え制で好きな演目だけを見ることができ、いわゆる“通”が多いことで知られるそうです。ここで目立ったのは、若い客、それも大半が欧米からとおぼしき外国人でした。日本の伝統芸能に魅了されている様子で、真剣な鑑賞態度に好感をおぼえました。

 

  単なる異国趣味の域を超えて、日本文化について深い知識と経験を有し、世界に紹介する息の長い仕事に取り組んでいる外国人がいます。絢爛たる文章、古典への広範な教養とともに西洋文化の知識を背景に膨大な作品群を残した作家の三島由紀夫などは、日本での評価にまさるとも劣らないほど外国で読まれてきました。翻訳を通して貢献した紹介者がいたはずです。

 

  日本には、世界的に誇る文化があります。だからこそ外国人が注目し、取り上げるのです。その文化をすべて吸収し尽くされ、本国が空洞化してゆくとしたら、悲しむべきことです。“JAPAN”に嫉妬するニッポン人とみなされないように、まずは外からのジャパネスクの関心にたえるくらいの知識、教養は身につけなければ、と反省します。

(鮟鱇)




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