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2006年「Webコラム一灯」

 町の死角と「放課後計画」

2006/09/30

  日曜、丘陵を切りひらいた新興団地に住む知人を訪ねました。似た造りの住宅が多くなかなか目標を発見できずにいる間に、瀟洒(しょうしゃ)な公園を見上げる場所に着きました。と、上方から野球の軟球が落ちてきて、車のボンネットで跳ね返りました。中学生になるかならないかの子どもが息せききってやってきました。ていねいにあいさつして、ボールを追ってゆきました。


 ∋ 久々に遭遇した光景です。広くはない公園でキャッチボールに興ずる集団があったのです。さまざまに規則もうるさいのでしょうが、広場から子どもの姿が消えていったように思います。がき大将に従って路地から路地へ、遊び場を求めて歩き回った経験からすると、子どもの”情報力”も低下していると感じます。昔は、子どもなりに情報網を形成していて、例えば近郷近在の家族構成やら最新の動向、冠婚葬祭のうわさなどが伝播していたのです。


  散歩の途次、公園をのぞきます。町内会の清掃、高齢者がゲートボールでもしていなければ、閑散とし、遊具を使う子どもとておらず寂しいものです。ありきたりのレイアウトの施設ですから、魅力がないのでしょうか。人気(ひとけ)がないと、余計に荒涼感が漂います。


  静岡県広告協会主催のセミナーのタイトルに「子供を犯罪から守るまちづくり」とあります。やや異色な内容だろうと、要旨を紹介する静岡新聞の記事を読みました。講師の大学教授は、子どもの成長の場としての都市計画を研究していましたが、公園や緑地で子どもが被害者になる凶悪犯罪が発生したことをきっかけに、犯罪現場の調査に乗り出したそうです。教授は、事件が起きた高層マンションや学校、新興住宅地などの問題点として「昼間に大人の姿が見えない」と指摘していました。


  文部科学、厚生労働両省が、少子化や防犯対策として、小学校の空き教室などを活用し地域の児童らが安心して過ごせる場所をつくるため、「放課後子どもプラン」を固めたと報じられました。約2万の全小学校区で、放課後や週末にスポーツや文化活動、学習指導を行う計画だそうです。特に地域の大人との交流を図るため、ボランティア、退職教員、大学生らに指導員や安全管理員を委嘱するといいます。


  確かに、昼間の町に大人の姿が少なくなりました。これだけ事件が多発すると、警戒心がまず働きますから、気安く子どもに声をかけられる環境でもないかも知れません。以前は、見知った顔が存在するだけで、安全弁になっていた気がします。大都会にない地方の魅力は、豊かな緑にもあるでしょうが、かつては共同体のつながりが密であることでした。なにげなく助け合う習慣がありました。「秋深し隣は何をする人ぞ」。今は、隣近所の”地域力”が弱くなっています。子どもがそれぞれ孤立しているように思うのです。


  縁台将棋を思い出します。大人の対局を傍らで見学しながら、差し手に一丁前の解説をする生意気盛りがありました。そんな”社交サロン”で、子どもが大人との付き合い方を自然に身につけたものです。行政が乗り出しての「放課後計画」がどんな風に機能するか。大人と子どもの結び付きを回復する効果を期待したいものです。

(鮟鱇)




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