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2006年「Webコラム一灯」

 林原の神髄

2006/10/19

  岡山市を訪れる機会があればぜひにと念じてきましたが、やっと実現しました。超優良企業としてあまりに有名な「林原(はやしばら)」の成長の秘密の一端にでも触れたい-。最近の成功企業を語るキャッチフレーズは、「ナンバーワンよりオンリーワン」ですが、林原はまさに「Only One」を理念としていると聞きます。地方に在って人類的、あるいは世界的視野で仕事をしていると驚嘆する声を頻繁に耳にしてきたのです。
 
  グループ15社、社員数1100人、うち研究部門140人。売上高800億円。保有特許約5000件といいます。大テーマとして掲げるのが「人の健康」で、リーフレットには、「世界に通用する創造的な仕事を生み出す、全く新しい企業集積体」とあります。
 
  広報担当者がみせてくれたPRビデオ、のっけから驚かされます。父親の死去に伴い、19歳、大学在学中に社長を継ぎ、世界企業を育ててきた林原健氏のインタビューです。穏やかな表情で理念を語ります。「林原の生き方を貫く、それは変わることのない家業だ」と。資料にも、基本は戦略的な非上場であり、新しい形の家業だと謳っています。なぜか。
 
  基礎分野などでは特に、研究開発は成果をみるまで長い時間を必要とします。10年20年に及ぶ研究開発は、家業として成り立っている事業体でなければできないという信念です。家業だから小さくても存続し、経営の根幹は不変だといいます。水飴からインターフェロンへ、加工業から澱粉化学、chemistryの第一級になった研究開発型企業にとって、永続する研究を経営判断で可能にするのは、家業だからこそ、との説明です。
 
  経営哲学はユニークですが、説得力に富んでいます。①ニーズを考えない②最も得意な分野で③他人がしない、新しいこと④保有知識と技術を最大限生かす⑤大量生産技術を確立できる-がその柱で、これらを集約した目標が「ナンバーワンよりオンリーワン」なのです。
 
  生物化学研究所をのぞきました。レンガタイルで統一した低層の建物、時々白衣の研究者を目にしますが、往来する社員は少なく、静かです。撮影に特段神経質になっているようにはみえず、むしろあけっぴろげに感じます。顕微鏡、試料、大小のカプセル……。バイオの空間とはこんなものか、と。
 
  夢の糖質とされるトレハロースの開発秘話を聞きました。新発見がなく危機に直面する中で、ブレインストーミング(議論)を重ねていました。だれかが言った何気ない一言、「砂糖のようで砂糖でないもの」。そこから一点集中の開発が始まったのでした。
 
  熟成10年、30年目の大ブレークといった字句を目にしました。真理を究める、あきらめなければ失敗ではない、などという表現にも、パイオアニアであろうとする意地を感じます。創業の地、つまり地方で家業に徹するところには、誇りをくみとります。企業の年齢とは何か。永続するとはどういうことか。インフラや業態は変わろうとも、不変の価値があるということでしょう。

 

(鮟鱇)




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