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2006年「Webコラム一灯」

 ノーメンクラツーラ

2006/11/18

 ∋ 現代のユートピアのごとくに宣伝された旧ソ連邦の解体は、随分あっけなくみえました。共産党官僚機構による支配は揺るぎなく、東西冷戦は軍拡競争とあいまって未来永劫続くかに思えたのですが、実は体制が抱える矛盾は国家を侵蝕していました。人心は荒廃し、組織はほころび、内部から崩壊してゆきました。


 ∋ ノーメンクラツーラというロシア語がしばしば報道に登場しました。「赤い貴族」と訳されます。共産党幹部が特権を享受し、不正経済の横行を見逃すばかりか、そこから利得を得たといわれました。ぜいたく品を集め、別荘を所有し、正義を弾圧することで棲息していたのです。「労働者の国」を牛耳る彼らは、腐敗のシンボルでした。


 ∋ 政府が、北朝鮮の核実験に対する国連安全保障理事会の制裁決議に基づき「ぜいたく品」の輸出を禁止する追加制裁の実施を了解し、高級食材や貴金属、娯楽品を中心とする24品目の禁輸リストを盛り込んだ関係政令の改正を決めました。その記事を読みながら思い浮かべたのは、既に死語になったとみられたノーメンクラツーラです。


 ∋ ぜいたく品禁輸リストは、金正日総書記ら閉ざされた国の指導層に向けた圧力を秘めています。金一族は、闇の資金でぜいたく品をかき集め、自ら貴族の暮らしを貪るとともに、部下に分け与え代わりに忠誠心を得るのだといいます。民は飢え、凍える冬を余儀なくされながら、弾圧を恐れ、沈黙するしかない。外国からは人道的援助が寄せられてきましたが、それすら特権階級のふところに消えてゆくとされます。


 ∋ 貧者の核という表現があります。国内の不満から目をそらすために核を開発、保有し、強国を気取るのです。民が飢餓の危機にさらされていようが、指導層の関心は、自分たちが特権階級でいるための体制保持にしかありません。締め付けと無法のために、国の経済は疲弊しているのです。偽ドルを”生産”して、世界の通貨体制が揺らごうが、彼らは何の痛痒も感じていません。金融で締めつけられれば、核で応じようというのです。新たな日本人拉致被害者認定が象徴します。この圧制国家の、国家意思による暴力が引き裂いた家族の悲劇は終わっていません。体質は変わっていないのです。


 ∋ 対北朝鮮輸出禁止のぜいたく品リストをあらためて眺めます。食品など=牛肉、マグロのフィレ、キャビア・その代用品……、衣類・装飾品など=香水、化粧品、毛皮製品……、電化製品など=携帯型情報機器、映像オーディオ機器・ソフト……、乗り物=乗用車、モーターボート・ヨット等……、その他=じゅうたん、クリスタルグラス、骨董品……。いずれも一般人とは無縁の品ばかりです。赤い貴族は過去、これらの品々をたんのうしてきたのでしょう。そして、宝のように抱いて滅びてゆくのに違いありません。                         (鮟鱇)
                               




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