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2006年「Webコラム一灯」

 劇場型政治の残滓

2006/12/18

 ∋ 2000日になんなんとする長期政権が、高い人気を維持したまま続いたのは、日本政治史に特筆されるべき奇跡でした。なにせ総理○年の使い捨て、などと揶揄されていたものでしたから。変人宰相といわれた小泉純一郎氏は、派閥という基盤もなしに、大自民党をぶっ壊すと絶叫して、ついに旧体制の終焉をもたらしたのでした。

 

  「改革」という錦の御旗が巧みに持ち出され、改革勢力対抵抗勢力という構図がつくられました。反論できないような空気が生まれました。郵政民営化をめぐる衆院解散、総選挙がその典型で、いわゆる刺客候補が選挙区に送り込まれる事態となって、議員は死に物狂いとなったのです。

 

  それまでの政権はおおむね不人気で、宰相の適格性を疑わせる言動なども手伝って支持率がひとけたというケースもまれではありませんでした。当然、政治不信が蔓延していました。根っこには、総理選びまでが与党の実力者ら“○人組”などによる密室談合で決められる不透明さがありました。陰湿な料亭政治に、国民有権者が関与できようはずもありません。

 

  その対極に出てきたのが、直接対話をうたう劇場型、メディア露出型政治でした。倦んだ人々には、実に新鮮でした。国会中継がドラマのようにテレビの視聴率を稼ぐほどでした。それはそれで慶賀にたえませんが、危うい空気が兆してきました。物事が単純化され、安直に斬って捨てるような乱暴さが明快さと混同されました。大衆迎合、ポピュリズムというきわどい言葉が頻出しました。

 

  教育改革タウンミーティング(TM)などでのやらせ質問、税金の無駄遣いに関する調査報告が出されました。イベント性重視の事業で「改革がポイントである」という意識が官僚をむしばみ、体裁をつくろうことこそ大事だと考えた結果だったようです。やらせ質問、発言依頼、そのための抽選の意図的操作、閣僚の送迎など常識外れの出費……。これら社会の感覚から遊離した演出により、小泉政権の意図はどうあれ、政治は安っぽいショーと化していったのです。

 

  次世代にもかかわる国政の重要課題はつまみ食いされ、脚光を浴びる間は異様なほどにもてはやされ、注目度に陰りがみえればあっさり放置される。刺客選挙、そして今になっての復党騒動も、そうしてみれば必然でした。政治家の“命”も道具立ての一つに過ぎず、前総理がいみじくも言ったように、「使い捨てを覚悟せよ」というわけです。

 

  罪深いのは、常に「世論」が引き合いに出され免罪符にされたことです。「世論」こそいい面の皮でした。もっとも、そこまで国中が閉塞し、「改革」に飢えていたこともまた確かです。劇場型政治に、飢餓感を満たしたのでした。TMやらせ問題、深刻で危機的な状況を象徴していたのです。

(鮟鱇)




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