∋ 薦められて脳血管撮影の検査を受けた知人の話です。結果が出るまでの1週間がとてつもなく長く、不安で仕方ない。頭にこびりついて離れず、睡眠不足になったといいます。なんとか「異常なし」の判定をもらったのですが、仮に梗塞の予兆でもあったらどうしたでしょう。分かったから救われるというものではありません。
∋ この場合、それでも人間の意図や意志が働く余地がありそうです。素人考えですが、詰まり易いようであれば、血管をさらさらする薬を処方してもらうとか、食事や運動療法で代謝を活発にすることもできるのではないか、と想像します。気休めかもしれませんが、手を打つことができるのは救いです。
∋ 耐震に何の問題もないはずの、一見強固なマンションやホテルが脆弱きわまりなく、実は地震で倒壊する恐れがあると宣告される。庶民の生涯最大の買い物であるマイホームから、落ち度のかけらすらないのに退去しなければならない。しかも、ローンだけは目の前に厳然と残る。こんな不条理があるでしょうか。
∋ 1年前、建築界史上最大の不祥事として発覚した構造計算書の偽造事件。被害者のどうしようもない怒り、やりきれなさがよみがえります。偽造の主役の元一級建築士に懲役5年の実刑判決が言い渡されました。国会での偽証を適用してこの刑罰ですが、建築基準法違反では罰金刑のみだといいます。事件の深刻さとのあまりの落差にあらためて驚きます。
∋ 判決を受けた元一級建築士の映像をこれまでテレビニュースなどで頻繁に見てきましたが、冷静なのかそれとも常人の神経を持ち合わせていないのか、まるでうつろなのです。自分が犯した罪の重さにおののくといった様子が微塵もみられません。国中を揺るがした大事件なのに、その責めを負うのが、何を考えているのか判然としない人物1人で、裁判長に「大変なことをしでかしたという感じが伝わってこなかった。わたしはいらだちを覚える」と言わしめたのでした。どうにも折り合いをつけようのない無力感を確認する判決でした。傍聴したマンション住民の感想がそれを物語ります。「事件が矮小化されている」。
∋ 1人でこれほどの不祥事を起こせる21世紀の先進国とは一体何でしょう。まさに砂上の楼閣ではないか。責めを帰すべき人や組織はどこにひそんでいるのでしょう。そのことに思いをめぐらせることでしか教訓を読み取れない異常な事件でした。綿々と続いてきた国の歴史に疑念を抱かせます。
(鮟鱇)