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2007年「Webコラム一灯」

 横着な時代

2007/12/26

   静岡県藤枝市で製茶会社を経営する時田鉦平さんの話を聞く機会がありました。地元の文化振興のため、藤枝文学舎を育てる会会長代行として市在住の作家・小川国夫氏らを顕彰する文学館の建設に心を砕いてきました。宿願の文学館がオープンしただけに、80歳の今年は大いなる実りの年でなかったかと想像します。血色もよく、何より軽快な足の運びを見ていると、青年のようです。
 
   もう50年余、茶の季節に茶業者へのメッセージともいうべき「新茶通報」を発行してきました。最近、平成19年版を出版し、藤枝の茶業の歴史、茶況動向などをまとめたと報じられていました。地域の風土、産業の変遷、ひとの流れ、文化史などに関心を寄せ、研究を怠らない姿勢には頭が下がります。若い日、分野を問わず先達を訪ね知遇を得て勉学を重ねてきた、その「知への謙虚さ」が続いているのでしょう。
 
   品質を語れる商人が少なくなった、というのが時田さんの嘆きです。商業の現場で、後継者が商品をじっくり学ぶことが希薄になっているというのです。どんな商売でも順境ばかりということはあり得ません。たとえ時代の波にもまれることがあっても、職人は手を抜いてはいけない、その時点で成長が止まってしまう。自ら商う品を熟知せずして、買い手を納得させることなどできません。
 
   流通革命は確かに便利さをもたらしました。同時に、負の側面もあるのではないでしょうか。例えば、巨大な陳列棚に大量の商品が並ぶことで、需要・供給双方ともにいちいち選別する手間を惜しむようになりがちです。乏しい商品知識しか持ち合わせない売り手。消費者も性急に過ぎると、目移りがして本当の買い物を見失ってしまうかも知れません。
 
   もう一つ、時田さんが指摘するのは、土地の風景から記憶に残るようなものがなくなってきたことです。「界隈」といった視点で周囲をあらためて眺めると、陳腐、横並び、平板な都市計画の名残りが迫ってきます。道路、住宅、公共施設……いずれも特徴を敢えて殺したような造作になっています。要するに、「横着者」の発想がそこかしこにはびこっているのではないでしょうか。うまいお茶を飲みたいとしましょう。茶葉の品質、量はもちろん、湯加減、場所や空気、それに器も大事な要素でしょう。それらにこだわってはじめて至福の一服を味わうことができるのです。横着は結局、損することになる?

(鮟鱇)




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