∋ 第21回参院選。雪崩を打つという表現がありますが、自民党はまさに「歴史的な大敗」を喫しました。敗者の弁はさまざまですが、岡山選挙区で民主党の48歳の女性候補に磐石のはずの議席を譲った参院自民の重鎮・片山虎之助幹事長の支持者を前にしたあいさつには、71歳のベテランの深い思いがこもっているように感じました。逆風をもろに浴びたのはもちろん、敵方の総大将として民主党総がかりの攻勢の標的となり、選挙区に張りつかざるを得なかったのでした。
∋ 何度か講演を聞いたことがあります。官僚出身ながら党人派を思わせるいかつい風貌、時に刺激的な言葉遣いで正論と本音をぶつける歯切れのよさが持ち味です。オーソドックスな保守の大物の風情ですが、敗戦を語って随所に悔しさが滲むのは当然です。ただ「これが国民の審判、おわび申し上げる」という要約は、民意を前にした謙虚さを吐露したものだと受けとめました。
∋ 当サイトでは、29日夜から30日早朝にかけて「開票速報特別版」で票と議席の動きをリアルタイムで追いました。徹夜明けの冴えない頭で、真夏の政治決戦に示された”民意”とは何だったのか、考えています。静岡新聞朝刊に特集された選挙区当選者一覧の経歴をあらためて眺めます。
∋ 参院は良識の府との通称通り、知識・経験豊富な熟達の政治家が多いというのが一般的な印象です。今回の全73議席の顔ぶれをみると、40歳代以下の世代が45人もいます。逆に70歳代はわずか1人。2議席を民主、自民が分け合った静岡選挙区もともに40歳代です。もうひとつ、女性が14人をも占めています。これこそが、民意なのでしょう。
∋ 選挙のたびに通う、地区の神社の集会所の投票所で、相変わらず目にするのは中高年者の多さです。投票の時間帯が異なるのか、若者をあまり見かけません。伝えられる自民の劣勢もさほではないか、などと予断を抱きましたが、実際には出口調査の結果に如実なように、いわゆる無党派層の票は、自民から民主へと大移動していたのです。05年の小泉ブームに沸いた郵政衆院選とは明らかに違う巨大な流れがあったのです。
∋ 事前の世論調査などで予測されていた通りのこの顕著な変化をつかみ切れなかった党が敗れたということでしょうか。安倍晋三首相が唱える国の姿の転換が民意には沿っていなかったということでしょうか。自民は、老壮青の均衡の上に成り立つ党といわれ、時々の課題に応じて巧みに自己変革を遂げて政権党の座にあり続けてきました。その変身も、安倍総裁のもとでは不発だったのでしょうか。選挙のカオとしての期待を担って登場した若い宰相の本当の敗因とは何か。
∋ 政権選択選挙ではないのだから、と殊更に今度の審判の影響を低く評価する声があります。それは違います。解散総選挙のある衆院と異なり、参院は任期6年、半数改選ですから、少なくとも3年は失地回復のチャンスは訪れないのです。重鎮の敗北の弁は、民意の重さを知る人の衷心からの言葉でしょう。 (鮟鱇)