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2007年「Webコラム一灯」

 間の悪い政治

2007/09/25

   痛々しいと言うしかありませんでした。安倍晋三氏の入院先での会見です。国政の停滞を招いたことを国民にわびたい、との趣旨でした。やつれ、テレビ画面からも青ざめて見えます。声はかすれ、しきりに唇をなめます。若さとスマートさで支持を集め、明快な言葉で理念を語っていたのと同一人物だとはとても思えませんでした。


   殊に無残に響いたのは、あのひと言でした。先の退陣表明について、「所信表明演説直後の最悪のタイミングとなり、……多大な迷惑をかけた」と述べたくだりです。決断の時期を誤った、適切な判断を欠いたと自ら認めざるを得ない。為政者として最も誇りが傷つく場面だったはずです。指導力、リーダーシップに何よりこだわったようにみえる若い宰相としては、回避したい言葉だったでしょう。


   病院での会見も、体調のこと、あのきまじめさからすれば致し方ないことなのでしょうが、間が悪いものでした。自分の後継を決めた総裁選の翌日、内閣総辞職の前日ですから、去る人の悲哀はいやでも増幅されます。派閥力学に基づく政治からの脱却を掲げ、成否は別として旧来の手法を超えて人事を行ってきて、それが一定の支持を受けていたのに、病床に伝わるのは、先祖がえりのような現実でした。


   振り替え休日に政治関連のニュースが頻繁に流れる中で、新総裁による自民党役員人事が一度決まった後に覆されたのには唖然としました。新総裁担ぎ出しへの流れを決定付けた面々に対する論功行賞がささやかれ、ごね得があったらしい、などというのです。さんざんの非難を浴びて追放されたはずの派閥の亡霊、密室談合の茶番を見ているかのごとくです。


   つい2カ月前の参院選、あれは何だったのか。選挙結果に込められた民意は正しく理解されているのでしょうか。民意との乖離を反省する言葉は偽りだったのか。党内でも、この鈍感さを憂える声があったがゆえに総裁選投票では派閥の締め付けも効なく票が分散したのではないか。若さと経験不足の無残な結末を見せつけられたから、老練と安定がキーワードになったというのですが、それはつまり、鳴りをひそめていた旧弊の復活だというのでしょうか。


   謀略情報だったそうですが、憔悴しきった病人に、穏やかではない「クーデター説」の真偽を問いつめなければならない。とても断崖絶壁に立たされた政党の話には思えません。世襲と派閥が、結局は組織の活力をそいできたとされます。では、そこから脱するためにどのような人事を行うのか。組閣の様子を見守ります。      

 (鮟鱇)




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