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2007年「Webコラム一灯」

 魚食礼賛

2007/09/28

   幹線道路沿いの看板が気になっていたレストランに入りました。フランス料理中心のようですが、名前すら知らない食べつけないメニューよりは、と迷った末に、鮪(まぐろ)の“かま”のなんとか煮のような一品にしました。かまといえば、焼いて塩か醤油をまぶし大根おろしとともに食べるくらいしか知りません。焦がしては鮪の風味が落ちるし、火のとおりが悪いと肉が容易にとれません。焼き方がコツだろう、くらいに思っていました。

 

   大皿に盛られて出てきたのは、熱いスープに浸された見事な大きさのかまです。トマトなど数種の野菜とともにまるごと煮込んであり、箸でもフォークでも容易にはずれます。多少、酸味のあるたれをしみこませると絶妙な味です。これなら、日本酒、ビールや焼酎はもちろん、洋酒にも合いそうです。大体、たれが淡白すぎても締まらないし、逆に濃厚では鮪本来の味をそいでしまいます。舌にしっかり記憶させて、自宅で再挑戦してみようと思います。なるほど、かまの調理もひと工夫で随分変わりそうです。

 

   最近の子どもは、食卓の洋風化の中で魚を敬遠する傾向にあるといいます。消費の減少が回りまわって水産業衰退の懸念につながっています。回転寿司の刺し身はパクつくのに、焼き魚や煮魚となると「ノー」。一番の理由はどうも骨にあるようです。以前は、卓袱台を囲んで魚の食べ方などもしつけられたものですが、若い親も苦手なせいか、骨をとるのを面倒がると聞きます。

 

   静岡新聞に、魚や鶏肉の骨を食べられるくらいに軟らかくする熱処理製法を地場の仕出し、食品製造の企業が共同開発し特許申請した、という記事が出ていました。「捨てられている骨や血合いも食べられないか」という問いかけにアイデアがひらめきました。骨を軟らかくするだけでなく味付けとレトルトも一度にできる、とありました。加工機械をつくり、温度や圧力、時間のかけ方により味覚を落とさず製造コスト削減も実現したとか。

 

   魚の骨を忌避する中で、子どものカルシウム摂取不足が指摘されます。従来、日本に輸出されてきた魚肉が、人口増の著しい成長途上国で大量消費されたり日本食ブームの欧米に持ち込まれたりしていると伝えられます。生活習慣病対策としても注目される魚類が食卓から消えてゆくのは、長い目でみると国家的損失ではないでしょうか。何とか魚食文化を守れないか。

 

 ∋  食は、人間の最も大きな欲望の一つです。魚が忌避されているというよりは、旨く食べる工夫がないがしろにされてきた側面があるように思います。調理次第で子どもたちの嗜好も回復するのでは、と期待します。もうだいぶ以前、アメリカの地方都市を回った際、ミシシッピ産のキャットフィッシュ(鯰)の馳走にあずかったことがありました。あんかけ風とでもいう調理で、これが豪快でした。風土が生んだ料理をその地で食べるのが旨いに決まっています。時あたかも秋刀魚の旬。脂がじゅっとくる肉に大根おろしと酢橘をまぶす。至福の夕餉です。ささやかながら、日本の幸せを噛みしめます。

(鮟鱇)




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