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2007年「Webコラム一灯」

 小沢病 政治エリートの蹉跌

2007/11/05

   日曜の昼下がり、まどろみながらフラッシュニュースを知りました。「小沢氏が辞意」。民主党の小沢一郎代表が、自民党との連立政権協議をめぐる混乱を理由に辞意を党幹部に伝えたというのです。出社の車中、思い浮かべたのは、父子2代で大統領となり、「ブッシュ王朝」と称される米国の政治家系の苦難です。

 

   父は湾岸戦争を勝利に導いた英雄でしたが、経済不振により再選を阻まれました。仇敵サダム・フセインを追い込みながら放逐するまでに至らず、決断の誤りを指摘されました。息子は、父の無念を晴らすかのようにフセイン打倒にのめり込み、独裁者を処断しましたが、あらゆる災厄をほじくり返し内戦状況を生み出してしまいました。出口のみえない外交、なかんずく「イラク」は、王朝の宿痾(しゅくあ)となったのでした。

 

   田中派の秘蔵っ子、若くして自民党の幹事長に登りつめた小沢氏は以後、何らかの形で政界の中枢に居続けました。まごうことなき、日本の政治エリートです。政治は彼を軸に回転していると言っても過言ではない様相です。選挙のプロとあがめられ、表も裏も知り尽くした上で、時に政権の黒子となり演出者ともなったのでした。が、政界再編というドラマを仕掛け、結局、失敗を重ねてきたのが小沢政治史ではないか。

 

   会見予定は30分遅れました。その間、民主党幹部による慰留が行われていたといいます。会見で真っ先に挙げた決断の理由は、「福田総理から要請のあった連立政権の樹立をめぐり政治的混乱が生じたことを受け、民主党内外にけじめをつける」ことでした。自ら選任した党役員から不信任を受けたに等しいという表現が飛び出しました。小沢流といえばそうなのでしょうが、民主党は若い党で力量が不足しており次の衆院選での勝利もおぼつかないと予測したのには、あ然としました。

 

   「言うことをきかないなら、やーめた」と、親が自ら育ててきた子を見限っている図です。若いのなら、経験者として教育する義務があります。それを唐突に、駄々っ子よろしく放り投げる。壊し屋の異名が説得力を持つのは、こうした経緯を繰り返してきたからです。「公党」という語がありますが、小沢氏の思想の根っこには、党は自分の所有物だという思い込みがあるのではないでしょうか。政策さえ正しければ、手段たる組織をどのように扱おうが勝手だ……。

 

   「政権交代」はつくづく小沢氏の宿痾だと思います。主張の明快さ揺るぎなさに強い指導者像を見る人は多いのですが、歴史的勝利を飾った先の参院選結果は、小沢手法のすべてを正しいと立証したのでしょうか。決定機での判断ミスは、すべてを水泡に帰します。大事な場面になればなるほど視界が曇ってしまう。「少々お待ちを」と抑制する人材をそばに置いていないのではないかと疑います。

 

 ∋  政治エリートの蹉跌を見たばかりです。「私か小沢さんか」と大見得を切った参院選での大敗後に辞め時を誤った安倍晋三氏は、病の不運とはいえ既に過去のひととなったようです。さらにこの騒動。電子号外を見るにつけ、衝撃の大きさが理解できます。株式市場は早速嫌気し、何より世界からは「日本の政治は一体どうなっているのだ」と嘲笑を浴びそうです。このような政治エリートに国の命運をゆだねなければならない危うさをこそ問うべきです。

(鮟鱇)




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