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2007年「Webコラム一灯」

 小沢“辞任”始末

2007/11/07

 ∋  小沢一郎氏の再度の記者会見をテレビで視聴しながら、日曜の唐突な辞任表明の際に発表した「民主党代表としてけじめをつけるに当たり」の記事切り抜きをあらためて引っ張り出しました。こんなくだりです。「本日、鳩山由紀夫幹事長に辞職願を提出し、執行部をはじめとして、同僚議員の皆さんに私の進退を委ねました」。

 

   指導者にとって出処進退はきわめて困難な判断で、殊に辞め方を誤るとそれまでの成果も無に帰します。ですから地位を占めた時から、見事な「一瞬の決断」を模索するといわれます。辞める日に備えるのです。備えてこそ、乾坤一擲の大仕事もできるということでしょう。自ら決すべきその進退を同志にまかせるというのは、念入りに逃げをうっているのではないかと疑念を抱いたのです。福田首相との「政策協議を始めるべきではないか」との提案は認められず、それはつまり「私が民主党代表として選任した役員から不信任を受けたに等しい」と言い切っている一方で、不信任を突きつけた同志に進退を委ね、党内こぞって慰留する図が現出する。どうにも理解しにくいのです。

 

   党首自ら、「民主党はいまだ、さまざまな面で力量が不足して」いると表現しています。こういうことか、と妙に合点がゆきます。自分たちは力不足だから、どうぞ剛腕を発揮して導いてください、そのためには無理も通します-。あれは選挙勝利に浮かれる若手を鼓舞する親心だった、というのもどうも普通のマナーを逸脱しているようにみえました。シンパの議員を引き連れての離党でもされたらかなわん、という議員心理だと揶揄されています。もともとが再編論者の小沢氏のこと、是非はともかく党を割って出る方がずっと分かりやすいのではないでしょうか。

 

   「綸言汗の如し」といいます。大辞泉には、「天子の言葉は、出る汗が体内に戻らないように、一度口から出れば取り消すことができない」と出ています。リーダーたる者、肝に銘ずべき箴言です。それでなくても日本語が軽んじられる昨今です。政治家ら公人の間で虚言妄言がはびこっているようでは、世の乱れを嘆く資格などありません。同じく、「恥を知る」は、「恥ずべきことを知る」「恥であることを自覚する」とあります。「恥をさらすようだが、ぜひもう一度頑張りたい」との心境だそうです。確かに恥をさらしました。「恥を知る」は、日本文化の骨格だったはずだ、と思い起こさせてくれました。

 

   「あそこまで言っておきながら」というのが、正直な感想です。覚悟を決め、退路を絶ち、つまり政治生命をかけた辞意表明の会見だと思ったのでした。わずか3日での翻意。なんのことはない、一人大騒ぎし勝手にコケた。それも、すねてどこぞへ引きこもり、みんながなだめてくれるのを待っていたのでは、とみえます。とかく指摘される秘密主義や独断専行の性癖は変わっていないのでは……。「張り詰めた気力がいわば途切れた精神状態」といった再会見での言葉は、恐らく真意なのでしょう。それは同情に値しますが、それでも釈然としないのは、ぶれて欲しくないという潜在的な希求が政治家に向けられているからです。国家の存立にかかわる政策が、気分屋に人質にとられたとしたら……。政治の劣化は、深刻です。

(鮟鱇)




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