∋ 朝刊の束とともに配達されたチラシの一番外側に、殊更目立つ一枚があります。背景に、黄色で大書された「決勝」の文字。「みんなでエコパへ行こう!」と呼びかけています。「キックオフ 11月25日(日)12:05」の予定で組まれたのは、第86回全国高校サッカー選手権大会静岡県大会の決勝です。対戦するのは、藤枝東高と藤枝明誠高、つまり藤枝ダービーなのです。
∋ 両校の地元藤枝市の熱気が込められたチラシの発行人として、「藤枝ダービーエコパへ行こう実行委員会」「藤枝市サッカー協会」「静岡県サッカー協会中西部支部」などが連なっています。実行委は、このカードの実現に合わせて発足した母体でしょうか。袋井市にあるスタジアムに市民こぞって応援に繰り出そうと促しているのです。目標が明確な、草の根型の運動でしょう。「ShizuokaOnline.com」としても、この盛り上がりにこたえようと、高校サッカーでは初めて、携帯サイトで経過速報をすることになりました。
∋ 出先で、ラジオの中継をイヤホンで聴き携帯の小さなウィンドーを眺め、同僚のせわしない作業風景をイメージしながら“観戦”しました。開始早々の藤枝東の得点。注目するスポーツイベントを実地に確かめたくて何度も通ったエコパスタジアムにほうりこまれたような、不思議な臨場感に浸ります。画面のコメント欄に更新されてゆく得点を追います。結果は4-1、全国大会への出場経験豊富な藤枝東高に凱歌が上がりました。
∋ この組み合わせが実現した時、さまざまな顔が浮かんできました。同じ市内の両校いずれでも、指導にかかわった教育者を知っています。商店街活性化を掲げ手づくりのイベントを企画している若手は、好機ととらえたに違いありません。サッカー少年団の付き添いで知り合い、交友がそのままフットサル愛好会へとつながっていった父親たちも、おそらく誘い合わせたことでしょう。いわゆるサッカー王国・静岡は一朝一夕にしてなったものではありません。裾野を広げるために長い時間をかけ、貢献してきた多くの人たちがいるのです。
∋ 先日のアジア・チャンピオンズリーグ、浦和レッズの決勝第2戦には大いに興奮しました。イランのセパハンの猛攻をしのぎ2-0で下し、第1戦と合わせ2戦合計3-1で栄冠をものにしたのでした。テレビ中継の画面からあふれ出てしまうのではないかと思わせたのが、埼玉スタジアムを埋めた赤い観衆です。約6万人が入場していたと聞きました。エコパで観戦した2002年ワールドカップ日韓大会のイングランド-ブラジル戦を記憶しています。スタンドのどよめきというのを、まさに体感し、身震いしたものです。レッズを称える埼玉スタジアムのエール、こだまが、だからテレビ画面からでも分かったのです。
∋ 元祖サッカーの町・藤枝は、校技にサッカーを取り入れた藤枝東高の伝統が深まる中で育ってきました。浦和、浦和市立、浦和南などの強豪がしのぎを削った「浦和」は、互いに競い合い学び合う相手でした。切磋琢磨を通して実力がはぐくまれてゆきます。藤枝ダービーはその意味で、格好の刺激となりました。やや低迷気味だとされる静岡のサッカーが、猛々しくよみがえるのを期待します。
(鮟鱇)