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2007年「Webコラム一灯」

 資生堂企業資料館

2007/12/01

 ∋  もう何年前になるのか、男の化粧品なるものを初めて手にしたのは、黒と銀、ダイヤカットのチェックのデザインにひかれたからでした。1959年発売、日本初の本格的男性化粧品という「エムジー5」でした。かけそば1杯60円の当時、容器の分量は確かめ忘れましたが、ヘアリキッド、トニック300円也だった。というようなことを、静岡県掛川市にある資生堂企業資料館の収蔵品で知りました。週1度、金曜に一般公開されると聞いていた施設を鑑賞する機会を得ました。

 

   一昨年、訪中の際に頭を悩ませたのは、訪問先に携える土産をどうするかでした。さまざまな店舗を漁って、それなりに気持ちを動かされる品がなかったわけではありませんが、引っくり返してみると、ことごとく「made in China」なのです。さすが“世界の工場”と感心しましたが、それでも購入するか迷ったものです。東南アジアの国々からも含め、私たちの暮らしに外国製品がいかに浸透しているかをあらためて知りました。相談した知人の助言は、「“資生堂”にすれば」でした。

 

   企業資料館ですから当然、沿革、130年余の歴史と伝統を彩ったモノと人々のプロフィール・業績などが展示されています。化粧品・香水といった製品の実物、女性に未知の美を提唱してきたというポスター、テレビのCM作品…と多様です。特に化粧品は、瓶の意匠を追うだけでも飽きることがありません。1872年、東京・銀座に日本初の洋風調剤薬局として創業しました。社名は、中国の古典「易経」に由来するとあります。「至哉坤元 万物資生 乃順承天(いたれるかなこんげん・ばんぶつとりてしょうず・すなわちしたがいててんをうく)」。常に時代を切り開きリードしてきた企業ですが、理念の骨格をなすのは東洋哲学なのです。

 

   「商品をして語らしめよ」とは、初代社長で自身芸術家だった福原信三の言葉だそうです。落ち着いた雰囲気のギャラリーを1-2階と回ります。収蔵品は、企業の歩みを語っているのですが、それらは日本の暮らし、風俗の流れを見事に反映、あるいは先取りしていることが理解できます。リーフレットによると、企業文化=生活文化を志向して資生堂スタイルとされるデザインを完成させた「意匠部」を、大正5年(1916)に既に誕生させているのです。

 

   企業活動におけるデザインの重要性を極めて明確に意識しており、それがポリシーの具体的表現になっています。理念とはつまり、消費者主義、品質本位主義で、そこには当然、商品の安全性を包含します。商品設計の思想は、必然的に社会貢献活動、環境活動につながってゆきました。

 

   顧客、消費者のためと信ずる製品、本物へのこだわり、品質に込めるプライドは、分野を超えてものづくりを支える根源的なエネルギーでしょう。それが「意匠」であり、「技」です。本来、偽物など存在し得ない世界のはずです。ところが2007年の日本を覆ったのは、「偽装」という暗雲でした。一体、何が破綻したのでしょうか。

(鮟鱇)




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