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Webコラム一灯

アントレプレナー静岡

2008/02/29

   「アントレプレナー=企業家、起業家。独創性と冒険性によっていわゆる経営者と区別していう(広辞苑第5版)」。経営用語として目にするようになって20年ほどでしょうか。「アントレプレナーシップ=起業家精神」には、意味を反映してか、前向き、解放的な語感があるように思います。


   IT産業の勃興がもたらした好景気と若い成功者の台頭は、バブル崩壊時のようにこのところ萎み気味ですが、「ベンチャーブーム」といわれる経済潮流を私たちは何度か目撃してきました。その第2次ブームと目される時代、静岡県浜松市で「ベンチャービジネス国際シンポジウム」が開催されました。1984年秋のことです。「研究開発型企業」の振興を目的にした、地方都市としては規模の大きなコンベンションに、内外の650社1200人が参集しました。


   産業構造変革の引き金をひいたばかりでなく、人々の暮らし、文化にまで押し寄せたベンチャー・スピリットの奔流は、時代の様相を性格づけるエネルギーになってゆきました。あまりの目まぐるしさで、技術先行、経営二の次といった事例も露見しました。稀代の成功者としてもてはやされたかと思えば、一夜明けて破綻の張本人として指弾されるといった極端なケースもありました。表があれば裏があり、陽とみえれば陰ものぞく。負の側面なしにものごとはあり得ませんが、現状を変えよう、新しい息吹を注ごうという士気は極めて高かったと記憶します。若々しい冒険心は、何らかの形でその後の日本経済に引き継がれてきたはずです。アントレプレナーシップを、懐古、郷愁の世界に押しとどめてはなりません。


   と、そんなことを考えたのは、ある催しの活況を目にしたからです。静岡県中部地区SOHO推進協議会と財団法人静岡産業振興協会が主催する「ビジネスプランコンテスト」最終審査会です。資料によると、起業家精神の高揚、中小企業における新製品・新サービス開発促進の後押しをする狙いで、事業化計画を大学、一般の2部門で募りました。当サイトを構成する「アットエス」も趣旨に賛同して協力してきました。


   引っ込み思案をつとに指摘される静岡人ですが、プレゼンテーションの一部を観覧し、交流会に分け入ってみると、結構陽性で、勢いがあり、気圧されるほどでした。でも当然で、なにせ「おだっくい」の町なのです。実用性とともに遊び心を盛り付けた提案とその成果物はいずれも、アイデアが横溢しハッとするような意外性に富んでいます。選考も「柔軟な発想、独創性」、「競合商品に比べた優位性」、「事業としての継続性や発展性」、「経営ビジョンや資金計画」などを基準に配点していました。


   印象的だったのは、受賞者らの謝辞でした。大学生グループが、指導教官や仲間の協力を挙げて思わず涙ぐんだのは爽やかでしたし、30代の企業家が受賞で終わりでなく世界を目指すのだと語ったのも、衒いがなく好感を抱かせました。四半世紀前、そうそうたる顔ぶれのベンチャービジネスの雄に接して、起業に至る風雪の厳しさはもちろん理解できましたが、そこに苦難を楽しむ泰然とした空気が漂うと、門外漢としても共鳴できたのです。変革への熱い思いとともにアントレプレナーに欠かせないのは、結局、人間味だと思います。ということは、だれにも成功への扉が開かれているということです。

(鮟鱇)




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