∋ 昨年の晩秋、大道芸ワールドカップ開催時期に合わせてやって来た知人を案内したところ、静岡市中心街のにぎわいに舌をまいていました。地方都市でいわゆる繁華街が繁華であるのをついぞ見たことがない、大概寂れてシャッター通り化している、ここは本当に稀有な例だと言うのです。かつての宿場町では、街道がそのまま商業地区になったところが多いようですが、それだけに人通りが途絶えると、殊更に寂寥が深いと感じます。
∋ その政令市・静岡県静岡市。ユニバーサルデザインの視点では、必ずしも合格点といえない構造の区域もあるのですが、JR静岡駅北口から拡散する地下道の出口を適当に選んで地上に出ると、確かに華やいだ空気に包まれます。歩行者、自転車が絶え間なく行き交う間を、車が遠慮がちに徐行している風情です。
∋ 商工会議所がまとめた2007年度通行量・買い物調査結果というのが、静岡新聞に出ていました。肌で感ずるのと同様に、歩行者の総通行量(07年11月25日時点)は、12.6%増の46万4295人と、3年ぶりに前年を上回ったのでした。大型店の進出などが効果をもたらしたようです。ヤング層への集客力を伝えられる商業施設の周辺では、若い女性の姿が目立ちます。にぎわいの主役がこの世代であることを数字が立証しています。
∋ 周辺の都市群はどうでしょうか。およそ活況とはいえない現状があります。日曜の中心街を徘徊しても、ご他聞にもれずシャッター通りです。大型店の契約駐車場の界隈は車両の出入りが目につきますが、それとて客が店内に吸収されてしまえば、さらに街路に繰り出すのはまれでしょう。つまり、そこを一歩誘い出す工夫が商店街活性化のカギだということです。
∋ 全国高校サッカー選手権で藤枝東高が34年ぶりに準優勝しました。選手たちは、JR藤枝駅から学校までの4㌔を凱旋パレードしたのですが、よく知られた街道沿いには約4万人が出てエールを贈ったというのです。平日の夕方、一体、どこからそれだけの数の人々が、と知り合いの商店主が驚いていました。“人垣”などという言葉を久々に思い出したとも語っていました。藤枝市と静岡経済研究所がこの準優勝の経済効果をはじいたところ、なんと6億3285万円だったというのです。調査を取り上げた記事中には、市民の一体感や郷土愛の醸成など目に見えない効果も大きく、「高校生の活躍が何よりの経済対策になった」という市商工課のコメントが付されていました。
∋ 人々は、街へ出るきっかけを求めているのではないでしょうか。仕掛けがあれば、繁華街、商業街をよみがえらせることはできるのではないか。陳腐な一過性のイベントでは、内在する欲求を引き出す持続効果は限られています。参加型のディスプレー・アートやパフォーマンスなど、街をそっくり芸術や文化の舞台に変えてしまおうという試みが各地で企画されています。活動そのものをメディアに乗せる広報を工夫する学生がいます。「まちづくり会社」を設立する自治体もあります。自ら発散しようとマグマ化しているエネルギーをどのようにすくい取ってゆくか。知恵を試せるのですから、幸運な時代と言えるかも知れません。
(鮟鱇)