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Webコラム一灯

 刺身党

2008/04/19

   このところ何度か、魴鮄(ほうぼう)を酒の肴にしました。胸鰭が大きく愛嬌のある格好で、そこをグロテスクだと嫌う向きもありますが、どうしてどうして美味です。小ぶりなもので400-500円、35-40㌢くらいで1000円程度と手ごろなため、丸で求めておろしてもらったり自宅でさばいたりして、刺身にするのです。鮮度がいいと、身が引き締まり歯ごたえ十分、ほのかな甘みもあります。 

   週末の楽しみは、刺身でやる晩酌です。以前は、真夏でもこれ、というくらい熱燗を好みました。日本酒の燗とくれば、やはり生もの、刺身となります。上戸は安上がりをもってよしとす、と考えていますから、近海の白身魚さえあれば結構嗜めます。ビール、焼酎にも合います。牛刺し、馬刺し、ステーキをわさび醤油で味わうこともあるのですから、ワインに刺身の取り合わせも不思議ではありません。

   万有百科大事典「生活」の巻で「さしみ」をひいてみました。タイの生作り、マグロなどの盛り合わせ、タイの洗いの写真3点と、相当詳細にわたる記述があります。15世紀の文書に言及していわれを説明しています。食の変遷では、江戸とそれ以前は白身魚を主として用い、明治以降はマグロ、カツオなどの赤身魚も広く用いることになった、とあります。昨今のスーパーの鮮魚部門では赤身が中心でしょうか。

   この伝統あるメニューが大手コンビニで本格的に販売されるそうです。“便利”を追求する町のミニ百貨店は、若者の利用が多いようですが、中高年層も引きつけたいということで刺身販売と相成りました。実験的に始めたところ、照準にした年代の客が増えた実績があるというのです。記事に添えられた写真には、「お刺身あります」なんて表示が写っています。

   食をめぐる議論の中でよく指摘されるのが、魚離れです。特に子どもは、骨が苦手なようです。予め骨を抜くなど処理したり調理してあれば食べるのだとか。切り身はもちろん重宝ですが、魚はその体型が千差万別で、どの魚体もじっくり観察すれば美しいものです。出世魚のブリ、カンパチやシマアジなど、姿は似ていても鱗の光り具合や体側のライン、そして何より味がそれぞれ異なります。体側の感触を確かめてさばき、厚切り薄切りの作り、洗い、たたきなどと魚肉に応じた調理をすることで、魚への親しみはいや増します。

   週末の市場で品定めし、旬の魚を求める。高級魚である必要はありません。時間にゆとりがあれば、自ら包丁を振るってみます。安価な砥石も骨抜きも入手しました。しょせん素人、身をぼろぼろにしてしまうことも珍しくありませんが、この過程で魚との関係が濃密になる感じがします。根わさびがあればすりおろし、その香りとともに味わう。まさに至福の時です。                        
 (鮟鱇)



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