ShizuokaOnline
オリジナルコンテンツ

ShizuokaOnlineのオリジナル企画。旬な話題を動画を交えてレポート。New! 
「大人」の読者にじっくり味わってもらいたいニュースが満載。「寄稿・わが至福の時」も好評です。
静岡県内の大学の話題は「キャンパス・ナビ」でチェック!
県内トップアスリートに迫る動画インタビューをお届けします。 
子育て世代に役立つ話題満載の交流広場です。
最新情報やニュースをケータイサイトでもチェックできます。お得なグルメ情報も掲載!

ポッドキャスティング

47News
家康囲碁道場
静岡ぐるめ探検隊
ShizuokaOnline(静岡新聞社・静岡放送オフィシャルサイト) > Webコラム一灯

Webコラム一灯

憶良ならずとも

2008/05/01

   徹夜の作業です、若いとはいえ体にこたえたでしょう。子育て世代の情報・交流サイト「ぱぱままにゅーす」を担当する同僚は、それでもパソコンの画面に食らいついています。開設から半年弱、多くの支持と期待に応えるために、全面リニューアルを実行しました。コンテンツの拡充はもちろん、ジャンルごとに帯のデザインの色を変えるなど、全般にカラフルに、さらに親しみやすくなりました。

   育児に四苦八苦した当時を回想しながら、よく目を通すのはコラム「あすなろ」です。子どもの成長を願う親としては、関心の赴くところは「健康」です。時に切迫した場面なども想像させる家庭内の様子が、率直に綴られています。子どもは、けがや病気と無縁でいられないのです。ですから、サイト内アンケート「子どもの急病、どうしています」の集計結果に注目しているところです。

   大型連休、さあ家族レジャーとなるのですが、この時期には静岡新聞地方版や市の広報誌の休日当番医の情報を丹念にチェックしていたものです。行楽気分に浸ろう、そんな時に限って熱を出したり腹痛を起こしたりします。自家中毒ですっかり衰弱した幼い息子の、痩せた甲にわずかに浮き出た血管。残虐なほどに太い注射針が打ち込まれました。いたたまれず顔を背けた記憶があります。子育ての危機管理上、連休は要警戒なのです。

   遅まきながらベストセラー「博士の愛した数式」を読みました。小川洋子作品は芥川賞受賞作「妊娠カレンダー」 以来です。発売当初から反響は大きく、本屋大賞を受賞したり映画化されたりと、純文学作品としては稀有な大トピックでした。広範な読者の支持を集めただけあって、読後感は爽快でした。

   交通事故の後遺症により80分しか記憶が持続しない天才数学者の博士、彼のもとに派遣された家政婦とその息子が主要な登場人物で、彼らの関係、行動が、まるで水彩画のごとくに淡々と抑制的に描かれます。修飾を排した文章が、不思議な感動をもたらします。寛容、許容、慈愛といった肯定的な価値が基調を占めるため、作品が明るいのです。特に博士と息子のやりとりからは、対等の人格として敬い合う姿勢がくみ取れます。

   同等の人格を認め合うといっても、それほど容易ではありません。教育が施される以前の幼児は、やはり躾の対象ですし、理屈や道徳を超えた行動をとることも珍しくありません。親にしてみれば、わが子は一種の所有物だとの潜在的意識があるかも知れません。これが、理不尽な子ども虐待につながってゆきます。残虐な事件が報じられない日はありません。

   子育て世代は、時に不安や悩みを抱えます。苦悩しているのは自分だけではないのだ、という思いは支えになるものです。悩みはもちろん、喜びも含め同世代が共有できれば、よりよい知恵も出てくるはずです。親が、同志として子どもとともに成長を遂げてゆく。リニューアルしたサイトが、その手伝いをできれば、と記事の更新に没頭する同僚も願っているはずです。万葉の歌人山上憶良は、「銀(しろかね)も金(くがね)も玉に何せむにまされる宝子にしかめやも」と詠いました。子どもへの愛といえば真っ先に浮かぶ名歌です。 
(鮟鱇)



メール メールで記事を紹介 印刷 印刷する



[特集]


ここから関連ニュース・バックナンバー

バックナンバー

定額給付金? 2008/11/14  
オバマ演説 2008/11/06  
医の懊悩 2008/10/31  
宴の後に 2008/10/22  
家族力 2008/10/15  
ノーベル賞の系譜 2008/10/08  
『王』たる所以 2008/10/03  
高揚する人辞める人 2008/09/26  
麻生総裁誕生 2008/09/22  
小島直記さんの教え 2008/09/16  
コメの風景 2008/09/09  
さらば総理 2008/09/02  
フォア・ザ・チーム 2008/08/27  
川根本町文沢 2008/08/19  
遍在する戦場 2008/08/14  
小川国夫追悼号 2008/08/07  
川が、たけり狂う 2008/08/01  
橋田信介さんの遺品 2008/07/25  
現場 2008/07/18  
国際ブックフェア 2008/07/11  
落書き騒動 2008/07/04  
休漁 2008/06/26  
地震と対峙する 2008/06/19  
居酒屋タクシー 2008/06/13  
シバの女王香る 2008/06/06  
福田語? 2008/05/30  
世界をゆく現代書 2008/05/26  
中国・四川、学校倒壊 2008/05/16  
戦力外通告 2008/05/09  
ほんとの出会い 2008/04/26  
刺身党 2008/04/19  
小川国夫さんを悼む 2008/04/11  
職質心得 2008/04/05  
若者がよみがえらせる街 2008/03/29  
村上春樹、トム・マシュラー 2008/03/22  
漫画の真実 2008/03/14  
“電車男”とNIE 2008/03/07  
アントレプレナー静岡 2008/02/29  
ご当地ソング浜松 2008/02/22  
日本人と英語 2008/02/15  
国技の品格 2008/02/11  
芥川の「鼻」とソーセージ 2008/02/06  
ケネディの残像 2008/01/30  
水は神の賜物 2008/01/26  
本の背表紙 2008/01/19  
藤枝東高 「一致を思う」 2008/01/14  
ヒラリーからクリントンへ 2008/01/10  
地方の息吹-アジアの中で(3) 2008/01/04  
浅羽佐喜太郎-アジアの中で(2) 2008/01/03  
文化財赤十字-アジアの中で(1) 2008/01/01  

バックナンバー

2007年「Webコラム一灯」
2006年「Webコラム一灯」
2005年「Webコラム一灯」
2004年「Webコラム一灯」