∋ 休みつけない会社勤めの“大型連休”は、ごろ寝でDVD鑑賞がせいぜいでした。レンタルショップで何本か借りてきたうち、ようやく見終えたのが、シルベスター・スタローンの「ロッキー・ザ・ファイナル」でした。第一作から既に30年余になるようですが、シリーズ最終作では、レストラン経営の元ボクサーが客に回顧談よろしく試合や対戦相手について語る場面が印象的です。彼は結局、身内にたぎるボクサーの血から自由ではありえず、向かうところ敵なしの若い現役チャンピオンとの試合に自らを駆り立ててゆきます。かつてのチャンプの「あきらめない」という信条が、カタルシス(心的浄化)効果をもたらします。
∋ スポーツの世界に、勝敗や世代交代はつきものですが、オリンピックの代表選考や米大リーグなどをめぐって連日伝えられるニュースには、余人の知る由もない人間ドラマが秘められているはずです。結果に至る過程にもちろん興味、関心があり、そこには感動があれば涙もあります。一方、成績、結果が問題であってプロセスにとらわれているわけにもゆかないのが、この世界の非情な現実です。
∋ 野茂英雄投手が、大リーグロイヤルズから戦力外通告されました。自由契約という名の解雇です。日本人プロ野球選手の大リーグ挑戦の道をひらいたパイオニアですが、39歳、球威は衰え決め球のフォークも切れを欠いて、「這いつくばってでも」の再挑戦は結果を残せない状況が続いていました。まさに功成り名を遂げた彼を、何がいまだにマウンドに向かわせるのか。「野球が好きだ」「プレーを続けたい」という、その一心でしょう。プロ選手としての誇りと執念は、周囲の安易な感傷などを排する厳しいものです。
∋ 第一人者が、表舞台を去ってゆきます。野村忠宏、井上康生選手はともに、柔道ニッポンの顔でした。芸術的な技を繰り出し一本勝ちをおさめる。お家芸の正統な継承者の姿です。それが世界の潮流かどうかは別にして、彼らはこだわり続けたのでした。日本一になるのは、世界一になるより難しいとされるそうです。五輪代表を逃した彼らが、次にどんな道を目指すのか注目します。
∋ この姿にも惹かれます。テニスのクルム伊達公子選手です。実力の絶頂で早すぎる引退を決断したようにみえた彼女が、コートに帰ってきました。37歳がみせる驚異的な体力、その試合ぶりは、彼女が願う通り、若手の奮起を促すに違いありません。世界をツアーしている頃、外国人有力選手と渡り合う強さとともに、彼女の表情は常に悲壮なまでの孤独感を宿しているようにみえました。それが、先日の現役復帰戦で見事な成績を飾った際には、実にいい笑顔を見せていました。11年のブランクがどのような意味をもっていたのか知りませんが、あの笑顔は何物にも換え難い財産になるはずです。プロ選手の新しい生き方を暗示しているように思うのです。
∋ 静岡新聞のスポーツ面に、日本プロ野球選手会による加入選手の今季の年俸調査結果が出ていました。支配下選手742人の平均は前年より78万円増の3631万円、開幕1軍選手の球団別平均年俸は、巨人がトップで1億1239万円だとか。年俸1億円以上の選手はセが40人、パが30人を数えています。この額について論評する知識は持ち合わせませんが、金額が成績を正直に反映する世界です。コネやしがらみが入り込む余地のない真っ向勝負ですから、何事も割り切って闘えるのでしょう。ただ、そこから先のドラマも、もちろん楽しみなのです。プロの醍醐味のはずです。戦力外通告が終わりではない、などと素人なりに考えます。(鮟鱇)