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Webコラム一灯

 国際ブックフェア

2008/07/11

   「脱メタボ」に頭を悩ますアナログ世代として、毎日チェックを入れるのが歩数計で、これがなんと1万7000歩を刻みました。東京ビッグサイトの途轍もない広大な会場。「国際ブックフェア」には30カ国、770社が出展し、デジタルパブリッシングフェアの併催もあって、さすがメガロポリスのシンボルの混雑でした。


 ∋  媒体間融合は今や時代のキーワードと化した感があります。新しい通信インフラが普及したデジタル世紀の揺るぎない方向なのでしょう。メディアミックス、クロスメディアなどの表現が飛び交う電脳社会は、出版との相性の良さが指摘されます。会場で、「クロスメディア・パブリッシング」を表題にしたカタログが配られていました。編集資源、出版コンテンツをウェブ上に展開するためのソリューションの提案です。


 ∋  いわゆる活字文化の変容とその急速な浸透をデジタルプラットフォームでまざまざと見せられるのが電子出版、電子書籍です。ケータイ小説がベストセラーの上位を席捲する時代になりつつあるのです。携帯電話上での小説、コミック、グラビアなどの展開は、音声コンテンツも含め若者のニーズをわしづかみにしました。会場で聴講したセミナーでは、06年の電子書籍市場182億円のうち携帯関連の売り上げは115億円を占めたと紹介されました。


 ∋  パソコンユーザーは30代男性が優位とはしばしば指摘されるところですが、ケータイがインフラとなる電子書籍については、女性の購買意欲が高いと聞きます。創作に取り組む潜在作家も多く、サイトでのライトノベルズの投稿募集、無料公開、人気投票での支持獲得、そして電子書籍化・販売という流れもできているそうです。しかし考えてみると、女流が元気だというのは、最近の紙の本の世界の傾向と同じです。


   出展・協賛、書店などのタグを首から提げた紳士ばかりでなく、一般の来場者にも中高年が目立ちます。傍らで眺めていると、ブースでのやりとりも白熱しています。出版文化、活字文化の苦境を憂える声が高まる中で、将来の方向への模索が真剣に行われている証左だと思います。よく知られた老舗・大手の版元が名を連ねる「書物復権8社の会」という看板が目を引きました。


   文字・活字文化振興法制定・施行5周年にあたる2010年は国民読書年だとか。絵本と親しむ運動、読み聞かせ、朝の読書などのプロジェクトが繰り広げられています。デジタルの時代になろうが、読書力、読解力、つまりは国語力が要求されます。文芸不振などといわれますが、突如、空前のベストセラーが誕生することもあります。機が熟した時に市場に出回る適時性、装丁・デザインなどの工夫、売るための仕掛けはもちろん欠かせませんが、本の命はやはり胸を打つストーリー、深い知識・教養をもたらす中身でしょう。本に込める探究の精神・哲学、思索を共有したいという著者、出版社のスピリットと、それを知性で受けとめる読者の存在が、この分野の支えであることは不変です。それにしても「渉猟」、よく歩いたブックフェアでした。        

 (鮟鱇)




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