∋ 日曜の散歩は、帽子にタオル、水のペットボトル、サングラスが必需品です。以前は気にしたことなどなかった熱中症対策で、真夏向けの防備といえます。昼食後、疲労にまかせてごろごろしていると、午前の日差しが嘘のごとく、外は曇ってきたようです。大気の状態が不安定だという、予報通りの気象です。とこうするうち雷鳴が始まり、薄暗くなり、ぽつぽつときました。その後は一気に激しい雨となり、壊れた2階の雨樋からベランダに打ち付ける音が耳に響きます。
∋ 幼い日、河川のそばに居住して洪水を何度か経験しているせいか、「水」に対する潜在的な恐怖が消えることがありません。趣味で川釣り、殊に鮎の友釣りを楽しむようになって以降も、安全には自分なりに注意してきたつもりでした。が、遠隔地のなじみの薄い河川に遠征して身震いした記憶が鮮明です。
∋ 岸から数㍍、くるぶしあたりの深さ、いえ浅さの地点で竿を入れました。日が翳り何となく生あたたかな風に不審を抱きましたが、魚の追いがあって取り込みに没頭していました。遠方に雷鳴の気配を感じましたが、つい川の真ん中方向に数歩踏み出していました。
∋ 深さは膝丈ほど、水流はやや急になり、笹濁りから徐々に茶色になってきました。葉や枝、ごみを交えた流れにはっと気付くと、上流の空は黒くなっています。これは、と危険を察知して慌てて岸を目指しますが、置いたはずの荷物が見当たりません。増水は急で、水中に歩を進めるのが難儀なほどです。焦るほどに岸は遠ざかるような不安が襲います。何とか護岸にたどり着いたものの、見失ったリュックはあきらめました。10分ほども経過したでしょうか、急流の水位はコンクリートの斜面の中央付近を洗っています。
∋ 国土交通省沼津河川国道事務所のホームページを検索しました。静岡県中東部を中心とした7月4日の集中豪雨で、長泉町の黄瀬川の水位が急上昇する様子を、観測地点の監視カメラがとらえていました。公開された映像から、川の様子の急変が一目瞭然です。午前5時38分からの映像を4倍速で見ていると、のどかな都市河川にしぶきが上がり始めたかとみるや、激流がたけり狂っているのです。
∋ 掲載されている断面図によると、5時40分に1.12㍍の水位が、5時50分には3.83㍍になっています。信じられないことですが、10分間に2.71㍍も上昇しているのです。「集中的な雨域が黄瀬川の上流・中流・下流へ移動し、下流部に豪雨が降る頃に上流に降った雨が黄瀬川を下ってきたため」水位が急上昇した特異な降雨だと解説しています。とはいえ、神戸市で4人が死亡する増水事故があったばかりのことでしたから、公開映像が突きつけた現実は衝撃的です。
∋ 地球温暖化への懸念が、それこそ地球規模で高まっています。傲慢な人類は、意のままに大地を、大気を痛めつけてきました。自然は成長もすれば疲弊もします。穏やかな母の懐のように人を受け入れてきました。しかし、その表情を変えることもまれではありません。怒り、災厄をもたらすものでもあるのです。たけり狂う河川の増水が、その豹変を警告しています。
(鮟鱇)