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Webコラム一灯

 未知なる沃野

2009/01/07

   日本は真の近代国家なのでしょうか。本当に先進国家なのでしょうか。できるなら楽観的な回答を期待したいところです。新年の新聞各紙を読んでも、薔薇色の夢は語られてはいません。それでもこの苦境に打ち勝つ処方を探っています。悲観的になるまい、と思っても、「百年に一度」と形容される世界規模の危機は、この国で新たな貧困を生み、政治はこの急速な事態の深刻化を前に立ちすくんでいます。

   東京・日比谷の「年越し派遣村」に仕事や住居を失った人々が救援を求めた。まじめに働こうとしている人たちが集まっているのか、と政府の要路の人物が無神経極まりない発言をする。国家の第一義的な役割は、国民が安全安心に生きる場所、機会を確保することにあるはずです。

   タクシーの運転手が強盗の凶行に遭う。フリーターの若者が路上生活者を暴力で蹂躙する。次々露見する寒々とした風景は、衣食住の確保もままならない現実を突きつけています。社会保障という暮らしの条件は失せてしまったのでしょうか。豊かさの概念を問い直すしかありません。

   いわゆる構造改革は、政治や経済の仕組みを望むべき方向へと導いたのでしょうか。実はもっと大きな主題である文明の構造改革は手付かずではないのか。正月の静岡新聞に載った特集紙面、「文明の潮流と日本の展望」と題した、劇作家・山崎正和氏と評論家・三浦雅士氏の対談が示唆に富んでいました。

   金融危機は、ニヒリズムが経済問題であることを示した文明史的な大きな転換点だという前提に立ちます。世相の荒廃をみれば、思い当たります。金融危機は虚無主義をはらみ、価値喪失、自暴自棄の空気を生み、またグローバリズムは国家の力を減退させました。ファシズムやポピュリズムが懸念される状況に、打開のキーワードは、「地域だ」と明快です。信と礼の成り立つ場所としての地域、という意味だそうです。

   地域は、独自に成立する社交的空間だといいます。そこには人々の知恵や経験が集積しています。高齢者が、その年輪に立脚する役割を果たしています。これまで、地域が独自性を生かし、その成果を情報発信するには制約や壁がありました。それを取り払い、地域の試みを開放したのが、IT(情報技術)です。ITの果実を最も享受できるのが、実は地域、地方なのです。メガロポリスを介する必要は既にないのです。

   ネット上には、無数のサイトが存在していますが、ユーザーの需要に応えるのは、恐らく最も地域色、独自性の強い情報です。人々の嗅覚は、地域独自のニュースを巧みに発見し取り込んでゆくのです。ローカルにこそグローバル性、普遍性があるのです。この地域の独自性を文化、文明とよぶのではないでしょうか。その独自性を高邁な価値に昇華させてゆくことが、つまり文明の構造改革だと思うのです。構造改革の未知なる沃野が地方にあるのは、楽観の可能性を広げるものです。世界は、地方という世界の集積なのですから。

(鮟鱇)




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