
富士山ろくの富士宮市人穴地区に、日本盲導犬協会の訓練施設「日本盲導犬総合センター」がオープンしました。盲導犬の候補となる犬の出産、飼育から訓練、さらに引退した犬をケアする環境を整えた盲導犬の総合的な育成訓練施設です。建設場所は、地下鉄サリン事件などで社会を震撼(しんかん)させたオウム真理教(現・アーレフ)の富士山総本部跡地で、地区の住民たちも、忌まわしい過去のイメージを払しょくすることができると、施設の完成を歓迎しています。
盲導犬育成の最先端
完成した「日本盲導犬総合センター」(愛称・盲導犬の里「富士ハーネス」)は敷地面積が国内最大級の約2万平方メートル。訓練棟や分娩棟など11棟が整備されました。目の不自由な人が盲導犬と「共同訓練」ができるよう宿泊棟が設けられたほか、手術室などを備えた「医療研究棟」、感染症にかかった犬を治療する「隔離犬棟」もあり、衛生管理にも配慮されています。現在は訓練犬10匹、引退犬2匹がいて、オープン2日前の今月20日にはセンターでの誕生第1号となった子犬7匹が仲間に加わりました。
国内初の試みとして行われているのが、施設内の一般公開。1日に2回、デモンストレーションが行われ、訓練士に寄り添って犬が歩いたり、障害物を避けたりする訓練を間近で見学できるほか、盲導犬や引退犬と触れ合うこともできます。
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盲導犬が足りない
センターができた背景には、全国的に盲導犬の数が足りないという現状があります。同協会によると、盲導犬を希望している人が全国で約7800人いるのに対し、現在、活躍している盲導犬は1000匹足らずで、絶対的に不足している状態が続いています。昨年度、29匹を育成した同協会は「中期5カ年計画」を策定し、2008年度までに年間50匹を育成する体制を整えたい、としています。同計画の重要な柱の1つが、センターの建設でした。
盲導犬を含め、聴導犬などの介助犬の受け入れを義務づけた「身体障害者補助犬法」が施行されて4年。補助犬と行動する障害者を取り巻く環境は以前に比べ良くなってきましたが、同協会はセンターを通し、補助犬や障害についての理解がさらに深めてもらうとともに、盲導犬を通して交流の場が広がることを期待しています。
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事件は風化させない
センターの地元、人穴地区の住民は、オウム真理教が解散する約10年前まで、一丸となってオウムと闘ってきました。当時、区長を務めていた熊谷幸一さん(81)は「“負の遺産”のイメージが強かったこの土地に、目の不自由な人に光を与え、社会福祉に役立つ施設ができたことは大変意義深い。地域の活性化にもつながることを期待したい」と、センターの完成を喜んでいます。
敷地内には、オウム撤退を掲げ、住民たちが長年闘った証しとして建てられた記念碑が置かれています。撤退後、99年に跡地に設置され、今回、センター敷地内に移されました。熊谷さんは「地元としてはオウムとの闘いを思い出したくないのが実感だが、事件を風化させても困る。後世にここで何があったかを伝えるためにも、碑を残してくれたのは非常によかった」と感慨深げに語っていました。
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センターは見学者が連れてきたペット犬も出入りできるようになっていて、開放的な雰囲気となっています。視覚障害者をはじめ、地域にも希望を与えることになったこの施設。今後、多くの人に盲導犬についての理解が深まるとともに、施設が核となって障害者や補助犬に優しいまちづくりが一層推進されることを期待します。