
富士市が、線路も道路も走ることができる新交通システム、DMV(デュアル・モード・ビークル)を導入しようと計画を進めています。DMVは、イギリスやドイツなどでも開発が進められてきましたが、いずれも実用化には至っていません。日本ではJR北海道が開発・研究を試み、今年4月に道内で試験的に営業運転をスタートさせることになっています。「夢の乗り物」とも呼ばれるこのDMVに富士市が目をつけたのはなぜでしょうか。

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今月14日、富士市でDMVのデモンストレーション走行が行われました。市内を走る岳南鉄道の線路を利用し、市公設地方卸売市場から岳南原田駅間を往復するルート(約6キロ)で実施されました。DMVはまず、市場から「バス」として道路を走り、原田駅に。線路内に進入し、駆け付けた多くの市民が見守る中、「電車」へのモードチェンジを披露しました。車体の底に収納されている車輪を下ろし、あっという間に「バス」から「電車」に変身。その後、「電車」として線路を走り、市場に向かいました。
デモンストレーション走行では、市が公募した市民モニター24人も乗車しました。一般の市民がDMVに乗るのは全国で初めてのことです。乗車した市民からは「モードチェンジは非常にスムーズ。バスでも電車でも乗り心地は快適だった」「十分に市民の足になると思う。早く導入してほしい」などと好意的な意見が聞かれました。
JR北海道の小池明夫社長もデモンストレーション走行を見守り、「富士山のふもとで走行できて感激している。DMVが交通の新しい役割を担う可能性をあらためて認識した」と富士市の導入計画を後押しする意向を示しました。
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Dual Mode Vehicle=デュアル(2つの)、モード(方法、様式)、ビークル(車両)という意味の英語。つまりDMVは線路と道路を「2つの方法で走る車両」のこと。線路では鉄の車輪を出して前輪を浮かせ、後輪のゴムタイヤを駆動して走る。JR北海道が開発したのはマイクロバスを改造した車両で、全長7.35メートル、定員25人。赤字路線対策の一環として開発を進めた。全国の自治体や鉄道関係者からも注目を集める中、富士市が積極的に導入計画を進め、昨年11月のテスト走行、今月のデモンストレーション走行と、北海道以外で初めての走行を実現した。車両の価格は鉄道車両の約6分の1の約2000万円。
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道路モード |
線路モード |

富士市では県内他都市以上に「マイカー依存」が進んでいます。調査によると、通勤や通学で自動車を使う市民は約70%で、全国平均の約43%を大きく上回ります。路線バスや岳南鉄道の利用者が近年、大幅に減るなど、マイカー依存傾向は勢いづくばかりです。鈴木尚市長は「高齢化社会を迎えることを考えれば、このままの状態でよいのか。公共交通を見直す時期にきた」と話します。
同市では「新幹線の新富士駅と東海道本線の富士駅との接続」も長年の懸案となっています。最小の投資で最大の効果をあげる方法を検討して出てきたのがDMVの導入でした。鈴木市長は「マイカー依存は簡単にはなくならないと思うが、富士市の将来のあるべき都市形態を考えると、ある程度コンパクトな都市形成にしなくてはならない。公共交通を整備することが市民の利便性を高めることにもつながる」と導入の理由を強調します。
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富士市は、DMVの本格運行を今後5-10年の間に実現したい考えです。構想によると、新富士駅から富士駅、市役所を経由し、東田子の浦駅までを結ぶルート(全長約16.9キロ。うち電車区間9.1キロ)で、途中3回のモードチェンジを行う計画です。線路は岳南鉄道のほか、製紙会社が所有する引き込み線を利用したいとしています。将来的には、富士宮市や芝川町などへのアクセスにも利用する考えです。
しかし、導入までには課題も山積しています。乗車人員が少ないことや鉄道車両に比べ重さが軽いため踏切が作動しない、道路での定時性をどう保つのかなどの技術面の問題、一方で公共交通に対する市民の意識の問題も挙げられます。市はJR北海道による開発の進ちょく状況を見ながら導入計画を具体化するとともに、市民への理解を広く求めていく方針です。

静岡市が次世代路面電車「LRT」の導入に向け、来年度から調査研究していく方針を明らかにするなど、公共交通については各地で見直しが展開されています。今後の都市形成を考える上で、インフラ整備が重要な要素になってくるのはもちろんですが、市民が出掛けたくなるような「魅力あるまち」の実現には今、何が必要なのか、ソフト面での対策も併せて検討していく必要がありそうです。