
「国民の司法参加」を目的に、私たち国民が「裁判員」となって重大な刑事事件の裁判を担当する「裁判員制度」が、2009年5月までにスタートします。このほど内閣府が発表したアンケート調査結果では、「参加したくない」と答える国民が8割近くに上るなど、現時点での国民の姿勢は制度への協力に消極的であることが明らかとなりました。人が人を裁くことへの心理的不安や責任の重さなど、さまざまな課題をどう克服していくのか、法曹関係者は制度の周知徹底に懸命です。とはいえ、今まで裁判になじみが薄く、法律知識もほとんどない一般国民が裁判に参加することは精神的負担が伴うのも事実です。他人事とは言えない「裁判員制度」導入の意義などについて考えます。

2月18日、静岡市で「裁判員制度全国フォーラム2007 in 静岡」が開かれました。最高裁などが、制度について正しい理解を国民に持ってもらおうと、全国各地で開いているフォーラムの一環です。約360人の県民が参加しました。フォーラムでは、制度の説明の後、静岡地方裁判所の竹花俊徳判事が、裁判員に選ばれるまでの手続きを具体的な例を交えながら分かりやすく解説しました。
続いて行われたパネルディスカッションには、経営者、個人事務所、会社員のパネリストに加え、現職の裁判官や検事、弁護士がアドバイザーとして参加し、「分かりやすい裁判」や「参加しやすい環境づくり」などについて率直な意見が交わされました。パネリストからは「難しい専門用語が出てくるのでは」「裁判は長期間かかるという印象があるが、どのくらいの期間を要するのか」といった指摘や疑問がアドバイザーに向けられました。アドバイザーからは「パソコンを使うなどして法廷で実際に見て、聞く裁判に変えようと検討している」「公判前に争点をあらかじめ整理すれば、数日くらいの審理で終わる」といった方針が説明されました。企業の対応として、「休暇制度などの支援体制が必要不可欠」との意見に対し、弁護士会から就業規則のモデル案を提示する考えがあることが明らかにされました。裁判員候補者が自分の都合のよい時期に参加できるよう「予約システム」を作ったらどうかといった要望が上がり、裁判所側が「検討したい」と柔軟な対応を見せました。
会場からも「裁判員に課せられる守秘義務に違反したら罰則があるのか」「評議の際、1人でも意見が違ったらどう対応するのか」といった具体的な質問が上がり、2年後に迫る制度への関心の高さと同時に“危機感”が伝わってきました。
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 有権者(20歳以上の国民)からくじで選ばれた原則6人の裁判員が、職業裁判官3人とともに刑事裁判を審理し、判決を決める制度。対象は殺人、強盗致死、放火や誘拐などの「重大事件」の一審裁判。2009年5月までの実施が決まっている。裁判員に選ばれた場合、原則辞退ができず、理由がない欠席などには罰則がある。仕事をもつ人が裁判員として参加する間、必要な休暇をとることが法律で認められ、休暇を理由に企業が解雇など不利益な対応をとることは法律で禁じられている。 | |
 平成17年度のデータを基にすると、裁判員裁判の対象となる県内の事件は95件。裁判1件につき、6人の裁判員が選ばれるので、年間で570人が裁判員となる。つまり1年間に有権者(選挙人名簿登録者=約304万7000人)の約5350人に1人が法廷の裁判員席に座る計算。6人に絞り込む前に、1件につき50-100人が候補になると見込まれるため、県内では年間4750-9500人が候補者となる。計算上では毎年320-640人に1人が候補に選ばれることになる。 | |

「裁判を一般の人たちに身近なものにしたい」。こう話すのは、静岡地方裁判所の鈴木健太所長です。鈴木所長は「一般の人たちの意見や感覚を取り入れることで、裁判や判決に対する信頼がいままで以上に地に足のついたものになる」と制度導入の意義を強調します。
「裁判所にとっても、一般の人たちに直接意見を聞いて結論を導き出すことは未経験。裁判官自身も一般の人たちが自由に率直に意見を言っていただく雰囲気づくり、話の進め方などを身につけなければならない。我々も勉強しているので、あまり重く考えずにぜひ参加してほしい」と理解の促進を呼びかけています。
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静岡地方検察庁は「移動教室」や「出前講座」などを開き、企業や学校に出向くなどして制度への理解を求めています。2月6日に静岡市で開かれた講座では、大手外食チェーン店「日本マクドナルド」の店長会議の場を利用し、担当職員が制度について説明しました。
会社員など仕事を持つ人にとって、裁判員に選ばれた際に仕事が休めるのか、休むことによって会社側から不当な扱いを受けないかなどの不安を訴える声が根強くあります。最高裁は決算期の経理担当者や農繁期の農業従事者など、状況によっては辞退ができるとの案を打ち出していますが、不安を解消するまでには至っていません。
今回、説明会を開いた日本マクドナルドでは「質疑応答などで出てきた内容を今後の人事施策や就業規則の改定を検討する際の材料の1つにしたい」と、社員が安心して制度に参加できる体制づくりに努める考えを示しています。
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「裁判員という言葉はニュースなどで聞いて知っていたが、制度に対する詳しい知識はなかった」というのが講座参加者の大半だったようです。話を聞いてみると「社会に貢献できるという面では意義のあることだと思った」「自分が思ったことがどのように審理に反映されるのか興味がある」などと前向きな意見が聞かれました。半面、「逆恨みをされたらどうするか」「法律的には仕事を休んでも不利益にならないといっても、実際には難しいケースも出てくるのでは」などの感想も聞かれ、制度に快く参加できる体制・環境づくりを望む声が数多く聞かれました。
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これだけ幅広い年齢層が直接かかわり、“負担”を強いられる制度はなかったのでは、と思うのがこの裁判員制度です。私たち一般国民にとって、「裁判」自体がなじみの薄い分野であり、同じようになじみの薄い法曹関係者たちの専門分野であるとの印象があるため、どうしても腰が引けてしまいます。しかし、少なくとも2年余り後には制度が始まります。有権者なら誰がいつ裁判員として呼ばれてもおかしくありません。裁判所をはじめ法曹関係者も、私たち一般国民に歩み寄ろうと必死に活動しています。私たち国民の側も、説明会に参加したり、裁判の傍聴に出かけたりと、今から心構えをしておく必要がありそうです