
江戸時代に整備された「東海道」は、数々の名所として往年の姿をとどめています。多くの旅人が行き交った街道には宿場が設けられ、当時の建造物の中には、国の登録有形文化財となったものもあります。デジ記者Webレポートでは、静岡県内の街道に残る文化財などを紹介する「街道の文化財」を不定期シリーズでお届けします。1回目は東海道の旧蒲原宿に残る旅籠(はたご)「和泉屋」です。
旧蒲原宿(現在の静岡市清水区蒲原)は、江戸日本橋から数えて15番目の宿場町。安藤広重の「東海道五十三次」に描かれた「蒲原・夜の雪」はあまりにも有名です。国道1号の山側に並行する市道が旧東海道で、訪れた人の目に映る景色は、江戸時代末期から明治時代にタイムトリップしたかの様です。この蒲原で、歴史ある街並みの研究・保存活動に取り組んでいる地域住民のNPO団体「蒲原宿まちなみの会」が実施した住民アンケート「蒲原宿内の残したい風景ベスト10」の結果、第1位に選ばれたのが江戸時代の旅籠「和泉屋」なのです。

県内に115件(2008年3月20日現在)ある国の登録有形文化財の1つにも数えられる「和泉屋」は、江戸時代の天保年間(1830~1844年)に建てられました。上旅籠として使われた「和泉屋」の2階にあるくし形の手すりや、柱から突き出た出桁(でげた)は当時のものだそうです。蒲原地区の複数の住宅でも見られる「懸魚(げぎょ)」という装飾品(建物の妻に、棟げたの木口を覆って破風板の下端に取り付けた板=三省堂「広辞林」より)もありました。魚の形にも見えたので、この様な名前だそうです。水の縁で火災を防ぐ意であるといわれているそうです。「和泉屋」は現在、間口6間のうち2間分が静岡市の所有で、「お休み処」として観光客などに開放されています。残り4間分は個人の所有で、タバコ店を営まれています。
築150年以上を数え、幾多の地震にも壊れることなく、今もその姿をとどめている歴史的建造物を、静岡市から管理を委託されている駿河裂織(さきおり)倶楽部の朝原智子理事長(写真)に案内してもらいました。

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1位=旅籠「和泉屋」
本陣跡前にある旅籠「和泉屋」は、国の登録有形文化財に数えられる
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2位=東木戸跡と 江戸時代の常夜灯
宿場の東の入口だった「東木戸」の跡、江戸時代の常夜灯が今も残っている |
3位=本陣跡のみごとな黒壁
宿場の中心でもあった本陣跡に残る見事な黒壁と格子戸
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このほか、第5位に明治時代に防火の目的で造られた個人宅のレンガの外壁、第8位に戦前に建設された日本軽金属(株)の発電用鉄管路、第10位に桜の名所として知られる「御殿山」などの眺めなどが入っています。ベスト10選出の元になった「候補」21カ所は、江戸時代の建造物など歴史的なものばかりではなく、普段から目にしている何気ない風景にもスポットを当てています。

今回アンケートを実施したNPO団体「蒲原宿まちなみの会」は、2007年に蒲原宿内の街並みや建造物など21カ所を「候補」として選びました。今回のアンケートの集計結果(抜粋を別掲)についての感想や選定の経緯などを、同会の吉田ふみ子会長(写真)に伺いました。
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静岡県を走る交通の大動脈・国道1号。今回取材した「蒲原宿」は、国号1号の北側を並行している県道396号(かつての国道1号)から更に北側(山側)に位置しているため、国道1号を通っても車窓からは見ることが出来ません。大量の自動車の排気ガスにさらされたり、自動車の走行による振動の影響が少なかったことも、歴史的建造物がその姿をとどめるのに良かったのかもしれません。
旧東海道を歩くと、昔の旅人のような気持ちになります。同時に、同じ静岡県という近場に、こんなにも良い風景があったのかと驚かされました。願わくば、この風景が末永く残って欲しいと思いました。車での旅行は便利ですが、たまには、昔日の旅人のように徒歩の旅を楽しむのも悪くないと感じた取材でした。(デジタル編集部・吉本寿)