広重の東海道五十三次には、白砂青松の海岸をはじめ松が欠かせない。これが日本の原風景だ。しかし1970年代以降、松枯れによって松林は衰退の一途をたどっている。
松枯れ現象の正体とは、一体何だろう。まず、松食い虫と呼ばれたマツノマダラカミキリが松を食い荒らすことだと考えられた。次にこの虫によって運搬されるマツノザイセンチュウこそが松を枯らす原因とされた。これらは昔から存在していたので、とどめを刺したのは線虫であるとしても、それ以前に松の抵抗力が低下し衰弱していたと考えるべきだ。幹線道路沿いの松枯れが目立ったことから大気汚染や酸性雨が疑われたが、私の考えでは主な原因は「おじいさんは山に柴刈りに」行かなくなったことだ。松は優れた燃料であり、松葉やマツボックリも炊き付けに使われた。松の根元は枯れ葉が除かれ、乾燥した好気的条件を保つことで松は健康だった。
松の好む生育条件は人によって維持されていたのだ。生活燃料として薪(まき)を使わなくなったことで、日本の原風景である松林が里山から消えていく。
(富士常葉大学教授)
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▼山田辰美(やまだ・たつみ)氏 1952年、藤枝市生まれ。NPO里の楽校理事長、富士学会監事などを務める。川や里山などの生態研究や環境教育の最前線に立つ。
山田辰美氏が生活の中で自然と触れ合うヒントを連載したコラム「山田辰美の自然だいすき」は静岡新聞の金曜
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