今の田んぼは近代的な整備によって、画一的な構造となって多様な生き物がすみにくい。野生生物と共生する豊かな農村環境によみがえらせる知恵を紹介する。
田んぼの排水場所にあるどんぶち(泥渕)は本来、トロトロな泥をためて再び田に戻すための水たまりだが、水がなくなる夏の中干し時期や秋冬に、生き物の避難場所として機能する。かつては県内の随所で見られ、豊かな生物相の維持に役立っていた。冬にどんぶちで、ゲンゴロウ類やタイコウチ、メダカやドジョウ、さらにクサガメまでが所狭しとひしめき合っているのを見たことがある。ほれ(掘れ)は山の冷たい絞り水を日に温めてから苗に回す堀だが、田の中に少しの深みが確保されオタマジャクシやヤゴなど多くの生き物が見られる。
先人の知恵が生み出した伝統的な田んぼの構造が、失われつつある里の豊かさを取り戻すことに有益なのだ。水田地帯にどんぶちがあれば、水の張られる時期に生き物は分散する。農村の自然を守り育む力の源は、本来、ため池・小川・田んぼの多様な水辺のネットワークなのだ。(富士常葉大学教授)
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▼山田辰美(やまだ・たつみ)氏 1952年、藤枝市生まれ。NPO里の楽校理事長、富士学会監事などを務める。川や里山などの生態研究や環境教育の最前線に立つ。
山田辰美氏が生活の中で自然と触れ合うヒントを連載したコラム「山田辰美の自然だいすき」は静岡新聞の金曜
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