ニッポニア・ニッポンという学名の鳥は日本で既に絶滅している。江戸時代には静岡にもいた鳥、トキのことである。中国に残っていたトキを分けてもらい、佐渡島にある保護センターで100羽にまで増殖させ、今年いよいよ野生に戻そうとしている。3年前に始めたコウノトリの野生復帰の試みを日本中が驚きの目で見守った。その一応の成果が、早くもトキに応用されようというのだ。
トキは棚田や水路で採餌し、薪炭林の中をねぐらとし、高木の樹上に営巣する「里山の鳥」である。この世界的に貴重な生物が現代の日本で生活し繁殖できるためには、里や里山の環境を再生する必要がある。新潟県や国は巨額を投じ、官民学が協力してトキのすむ佐渡島の環境に戻す事業を2001年度より進めている。しかし、順調に野生復帰が進行すれば、やがて日本各地へと広がっていく。トキの生存を保障するのは、豊かな農村環境である。減反政策で4割もの田んぼが休耕され、中山間地の農地や里山が荒廃し続けている。トキの美しい舞姿を見ることができれば、この国はまんざらでもないと思える。(富士常葉大学教授)
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▼山田辰美(やまだ・たつみ)氏 1952年、藤枝市生まれ。NPO里の楽校理事長、富士学会監事などを務める。川や里山などの生態研究や環境教育の最前線に立つ。
山田辰美氏が生活の中で自然と触れ合うヒントを連載したコラム「山田辰美の自然だいすき」は静岡新聞の金曜日夕刊に連載中です。SBSラジオ「山田辰美の土曜はごきげん」は毎週土曜日午前7時から放送。
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