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おとな派 読み物

【寄稿・わが至福の時】「2007年も前向きに」

2007/01/10


 

(写真1)ブダペストの観光名所、漁夫の砦

 「与えられた自由な時間を満喫しています」「読んだり書いたり呑んだりの日々です」「昨年は念願のスロー旅を実現しました」「最初は戸惑いましたがやっとペースをつかめるようになりました」「大して好きじゃなかった仕事をようやく卒業したのに何故かまたフルタイムで働いています」「自分自身の体力維持や社会参加の意識を持って動き回っています」
 年賀状をめくっているとこんな近況報告が目に付いた。自分と同世代の知り合いが次々と定年を迎えているためだ。文面から見る限り多少の戸惑いはあるものの人生の第二ステージにそれぞれの思いを込めて着実に踏み出したようだ。自分も近況報告に「相変わらずの山歩きを楽しんでいます」と書いた。定年退職して二年余。趣味の山歩きだけでなく、ちょっぴり仕事もして第二の人生を楽しんでいるつもりだが、働き蜂として何十年間にわたって染み付いた習慣はそう簡単に消えず、スローな人生にどこか落ち着かないところを感じているのも事実だ。


 

(写真2)漁夫の砦からのブダペスト市街地

(写真3)チェスキー・クロムロフ城

 正月の新聞はどこも2007年問題を取り上げていた。企業戦士として日本の高度経済成長を支えてきた団塊の世代がいよいよ定年を迎え始める。定年後をどう生きるか。いずれの記事も、嬉々として第二の人生を送る先輩を紹介しながらこれからの生き方をアドバイスしている。
 自分もちょっぴり先輩として何かアドバイスできるものがあるだろうか。「趣味の世界を広げて常に学習し、野心を燃やして家庭や地域社会で存在感を示す。もちろんチャンスがあれば仕事の経験を生かすのもいい。後ろ向きではいけない。積極的に発言し前向きに生きよう」
 言葉では格好良く言える。では自分はそれだけのことをしているか、と自問すると「うーん」と首を傾げざるをえない。「山歩きの趣味は全国から世界に広げているし、花や山の写真撮影も楽しい。仕事の経験も生かして週に二日ほど働いている。なかなかのものではないか」と満足する半面、退職前に考えていたことの半分もできていない。毎日着るものなど身の回りのことにも自立できず、妻からは「年を取るということは美しくなくなると言うこと。身だしなみにはもっと気を遣い、きれいにしてくださいね」と厳しく注意されることもたびたびだ。これでいいのだろうか……。
 そんなことを考えて年賀状をめくっていると山仲間からの賀状に「健康は人生の最大の富である。その富の蓄積のために共に歩きましょう」とあった。「そう、健康が第一だ。蓄積しなくとも維持するために今年も山歩きに精を出すか」。そこで思考は止まった。


               ◆                    ◆                    ◆


(写真4)前庭の池に張った氷に映えるベルヴェデーレ
 宮殿(ウィーン)

(写真5)プラハ市内を流れるモルダウ川の岸で白鳥に
餌をやる親子づれ。向こうの橋はカレル橋

 
 この暮れに中・東欧に駆け足旅行をした。海外旅行といえどもこれまでは観光名所巡りではなく山歩きやトレッキングが主体だった。スイス・アルプス、カナディアン・ロッキー、ニュージーランドなどで山小屋泊まりの歩きを楽しんだ。「外国に行ってまで山の中を必死で歩くことはないのでは」という声もあったが、山に入って自然に触れることが楽しみだった。
 今回の中・東欧は違った。「観光地巡りもしてみましょう」という妻の一言でオーストリア、ハンガリー、スロバキア、チェコの世界遺産を巡った。重厚な石の建造物、美しい街並みに歴史的遺産の素晴らしさをあらためて思い知らされた旅だったが、同時に歴史についての知識のなさに情けない思いもした。どこの説明でも「ハプスブルク家が進出して……」「マリア・テレジアが……」と出てくる。「ふん、ふん」と耳を傾けてはいたものの、全体の流れはさっぱりわからない。「世界史が履修漏れということはなかったはずなのだが」
 観光地巡りもまたよし、歴史の勉強もしなければ、とやりたいことがまた広がった。前向きの姿勢だけはまだ失っていないようだ。

(O.K=静岡市在住)



           

  (写真6)観光客らでにぎわうプラハの旧市街地広場 

  (写真7)美しいチェスキー・クロムロフ(チェコ)の
   家並み
   (写真8)ブダペストのドナウ川に架かるライトアップさ
   れた鎖橋  
  













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