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おとな派 読み物
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2007/02/22 |
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(写真1)きれいに弧を描く駿河湾の向こうに遠く南アルプスの山並みが 浮かぶ | 日本で「アルプス」と聞けば3千メートル級の高峰を連ねる雄大な北アルプスや南アルプスを思い浮かべる。その山容といい景観といい本場のヨーロッパ・アルプスに負けない素晴らしい山岳として中部地方にある飛騨山脈、木曽山脈、赤石山脈を総称し「日本アルプス」と呼ばれる。まさにわが国を代表する山岳地帯だ。 この日本アルプス以外にもわが国にはアルプスの名を冠した山がたくさんある。鎌倉アルプス(神奈川県)、比叡アルプス(滋賀県・京都府)、大和アルプス(奈良県)、須磨アルプス(兵庫県)、周防アルプス(山口県)、四国アルプス(愛媛県)、九州アルプス(大分県)、洋上アルプス(鹿児島県)といった具合だ。そしてわが静岡県にも沼津市に「沼津アルプス」がある。
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(写真2)ロープが張られた急斜面
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(写真3)縦走路で最も高い鷲頭山山頂。 駿河湾の向こうに白く南アルプスが見える | 気高く、雄大なアルプスの名を頂くのは本場のアルプスに申し訳ないのではないかという気がしないではないが、それぞれの“アルプスらしさ”を持っているに違いない。それを地元の人たちが誇りと愛着、親しみを込めて「アルプス」と呼ぶようになったのだろう。沼津アルプスにはどんなアルプスらしさがあるのだろうか。2月中旬、出かけた。 沼津アルプスとは、沼津市街地の香貫山から奥駿河湾に沿った横山・徳倉山・鷲頭山・大平山の山並みのことだ。最も高い鷲頭山が392メートル、最も低い横山は183メートルと高くない。アップ・ダウンを繰り返して5つのピークと7つの峠を結ぶ縦走路が地元の人たちによってよく整備されている。登山家の岩崎元郎さんによる「新日本百名山」に選ばれたため今や全国に知られた山となり、この日も県外からバスなどで大勢の登山者が訪れていた。 縦走は香貫山から南に向かっても、大平山から北に向かってもどちらからでも大変さは変わらない。富士山を前方に見る北向きのコースをとった。北向きコースは江浦湾に面した多比から登る。JR沼津駅からバスで多比に下りると、多比神社の前で十数人の登山グループが準備運動をしていた。その脇の小さな道標に導かれての林道歩きから本格的な登山道に入り、最初の大平山へは多比口峠からピストンする。大平山は356メートルと鷲頭山に次ぐ標高だが、山頂からの展望は樹木に囲まれていまひとつだ。峠に戻って本格的な縦走が始まる。
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(写真4)気持ちのいい稜線歩きもある
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(写真5)鷲頭山を過ぎると沼津市街地と 富士山の展望が広がる
| 登っては峠に下りまた登るという縦走路は侮れない。ロープやクサリの付けられた急坂あり、岩場の細い尾根道ありとなかなか変化に富んでいる。汗をかきながら慎重に歩を進めていると、陽だまりに早くもスミレが肩をすぼめるように小さな花を咲かせていた。 景観は天下一品だ。眼下の駿河湾から遠く南アルプス、富士山、箱根・伊豆の山々、そして沼津や三島の市街地が次々と展開する。最後の香貫山山頂展望台からの眺めもいい。足元に狩野川が沼津市街地をうねるように流れて駿河湾に注ぎ、目を上げれば手前の愛鷹山に守られるように富士山が頭を出している。寒風に吹かれながらも去り難い展望だった。 香貫山から一気に狩野川堤に下り、約5時間の山歩きを終えた。まさに「山高きがゆえに尊からず」。山好きを満足させる縦走路であり、アルプスの名を冠した理由を納得した。 ところで「日本アルプス」という呼び名は、大阪造幣局の技師として来日した英国のウイリアム・ガウランドが、1881年(明治14年)に刊行された「日本案内」の中で「信州と飛騨の境にある山脈はジャパニーズ・アルプスと呼ぶにふさわしい」と紹介したのが始まりといわれている。その後、登山家や文芸評論家として活躍した小島烏水が著書「日本アルプス」の中で「飛騨山脈を北アルプス」、「木曽山脈を中央アルプス」、「赤石山脈を南アルプス」と記し、これが定着したという。 沼津アルプスの名付け親はあの山並みをこよなく愛していたに違いない。
(O.K=静岡市在住)
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