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おとな派 読み物

【寄稿・わが至福の時】「湖西連峰の尾根歩き」

2007/03/15


 


(写真1)多米峠からの浜名湖。遠くアクトタワーが見える

 連なり続く山々を表現する言葉として「連峰」がある。穂高連峰、立山連峰、谷川連峰、八ヶ岳連峰と呼ばれるように雄大な峰の連なりが目に浮かぶ。どっしりと構えたスケールの大きさと同時に気高さや厳しさを併せ持ったイメージは、前回、このコーナーで取り上げた「アルプス」と共通するものがある。
 この雄大な名前を冠した山並みとしてわが静岡県には東の「沼津アルプス」に対抗するように西には「湖西連峰」がある(世界遺産登録を目指して活動が始まった南アルプスがあるが、これは日本を代表する山岳として別格)。湖西連峰は浜名湖の西の湖西市から浜松市三ヶ日町にかけての静岡・愛知県境にある。沼津アルプスと同様、標高は最も高いところでも400メートルと決して高くない。光輝く浜名湖を眼下に適度のアップダウンを繰り返す尾根歩きは四季を通じて楽しむことができ、訪れるハイカーが絶えない。浜松に勤務し、子どもが小さかったころ幾度か訪れたことを思い出しながら3月初め、久しぶりにJR新所原駅から歩き始めた。
 湖西連峰への登山ルートはいくつもあり、地元の人たちや自治体によってよく整備されている。JR新所原駅からのルートは南端から北に向かう。登山口で「あら環像」と呼ばれる“土偶”が迎えてくれる。自然環境保護と「ごみゼロ」を願って地元の小学生が530体を作り、登山道に配したという。ユーモラスな表情で梅田峠、嵩山(170㍍)へと道案内してくれる。嵩山からは輝く湖面の向こうに浜松市のシンボル・アクトタワーが霞んで見える。一息入れるのに絶好の展望台だ。

 

(写真2)雨宿りが出来るような雨宿り岩

(写真3)富士見岩

(写真4)大知波峠廃寺跡

 梅田峠に戻り、ここから仏岩、神石山(324㍍)、雨宿り岩、多米峠、大知波峠、富士見岩、本坂峠と尾根通しの山らしい道が続く。“連峰”だけあって上り下りを繰り返して名もないピークを越え、十分に汗をかかせてくれる。ヤブツバキの大木やイヌツゲの原生林もあり自然も豊かだ。大知波峠の廃寺跡(平安時代の山寺跡、国指定史跡)にある池にはヒキガエルの卵塊が大量に産みつけられていた。


 廃寺跡の遺構に腰を下ろし、浜名湖を一望しながらむすびを頬張った。するとどこからかウグイスの鳴き声が聞こえた。今年初めて聞く春告げ鳥の声に、「いよいよ春本番」と心踊るものがあった。陽だまりのスミレの花も春の風を楽しむように揺れていた。
 この縦走路を歩いてただ一つ不満なのは無粋な高圧線の鉄塔がコースに寄り添うように通っていて、せっかくの景観を損なっていることだ。カメラを向けると必ずといっていいほど鉄塔や高圧線が入ってしまう。どうにもならないことは分かっていても、つい「邪魔だ」と腹が立つ。遠く富士山を望める富士見岩の脇にも鉄塔がある。富士見岩に乗って浜名湖にカメラを向けながら「鉄塔が邪魔ですね」とハイカーのグループに話しかけたら、グループの一人が「最近の金属ドロが一働きしてくれないかね」と冗談で答えた。


 連峰のハイキングコースは本坂峠までもう少し続くが、富士見岩から知波田に下ることにし、あらためて浜名湖を展望した。市町村合併で浜名湖を取り囲むように大浜松市が誕生した。しかし、平成の大合併劇の中で湖西市と隣接の新居町は浜松市への合併に背を向け、環浜名湖市は実現しなかった。湖西市と新居町が合併の道を選ばなかった理由も分からない訳ではないが、浜名湖の素晴らしい自然を後世に残すためにも沿岸の市町が一体となってほしかった。
 そんなことを考えながら知波田に下り、天竜浜名湖鉄道の知波田駅からスタートの新所原駅に戻った。車窓から眺める湖西連峰は堂々とした山並みを誇っていた。

                                (O.K=静岡市在住)


 

    

 

(写真5)珍しいイヌツゲの群落

(写真6)陽だまりに咲くスミレ (写真7)嵩山からの浜名湖
  











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