二十数年間、リサイクル運動に携わってきた山中恵美子さん(57)=浜松市中区蜆塚=は平成16年、静岡文芸大に入学した。現在、文化政策学科の4年生。「行政や町づくりの方法論をしっかりと勉強したことがないことにふと気付いた」。活動に必要な知識を学べる大学に入るのは自然の流れだった。
グラフィックデザイナーの仕事をしていた30代、リサイクルの精神に魅了されNPO「リサイクル運動市民の会県本部」を設立。行政と協力し、リサイクル精神の市民への浸透に奔走した。
がんで休学
「私はもう消える立場。若い人に環境に優しいシステムを残したい」。そう思うようになったきっかけは48歳の時。子宮体がんが見つかった。「私って死ぬんだと思ったら、大切なことは思い立った時にやらなきゃいけないんだと思えるようになった」。入学を2カ月後に控えた時に再発、抗がん剤治療の副作用で髪の毛が抜け落ちると、カツラをかぶって入学式に出席した。
60代に突入する団塊世代にとって病気の不安は高まる一方。山中さんは昨年の9月に3度がんが見つかり、治療のため半年間休学。ことし4月に復学した。「私たちはいい時代を生きてきた。今のぎすぎすした社会に少しでも還元できればいい」
団塊世代をターゲットにしたシニア就学制度を設ける大学は増えている。県内では静岡英和学院大(静岡市駿河区)が20年度から始める。選考は面接のみで学費も免除。「技術革新が進んだ時代に第一線で働いた団塊世代は常に成長、勉強することを求められた。学ぶことを老後の生きがいとする人は多いはず」と奥田和弘学長。「大きな経験を持った社会人が若い学生に与える影響は大きい」と大学側のメリットも期待する。
余力あるうち
利田康一郎さん(60)=静岡市葵区足久保口組=は33年間勤めた公立中学の理科教諭を定年の1年前に辞めると、4月から富士常葉大大学院の環境防災研究学科に通う。「仕事ができなくなったから次は何をしようと受け身になるのではなく、余力があるうちに動き出した方がいい」
「リタイアした後は妻の生活も変化する。協力を得るためにも10分な準備期間が必要」とも話す。幼いころから見守り続けてきた安倍川の防災対策を学ぶ日々。「学び、働く喜びを持ち続けることが大切。退職金を食いつぶしながら生きるのでは先が見えている」
メモ 県内の大学で学ぶには高校生らと同じように一般入試を受けるほか、社会人聴講生として学部や大学院の授業を学生と一緒に受けたり、大学が主催する社会人講座に参加したりする方法がある。筆記試験などの選考は特にない。県立大の地域経営研究センターでは医療福祉やNPO法人などをテーマに社会人講座を企画。3―4カ月で10回程度の講義を受けるのが一般的という。