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| (写真1)朝の光に輝くオオミスミソウ |
「病膏肓に入る」。病気がひどく治療のしようもないという意味の言葉だが、転じて物事に熱中することをいう。そこまで夢中になった訳ではないが早春の山の花を追いかけて4月下旬、佐渡に行ってきた。3月下旬の角田山、弥彦山に続いての新潟行きだ。静岡では見ることが出来ない山野草が雪解け直後の山に、一瞬の輝きを見せる。その輝きを見たくて1カ月も置かずに再び車を新潟に走らせるなかで、ふとそんな言葉が頭に浮かんだ。
野の花の適期に、しかも好条件で訪ねるのはなかなか難しい。4月に入ってからの新潟地方は天候が不順だった。中旬になっても寒い雨の日が続き、雪も降った。訪れる日をいつにするか。静岡から500キロ以上も離れた佐渡となると「明日は天気がよさそうだから行こう」というわけにはいかない。フェリーや旅館の予約もしなければならない。自分のスケジュール表と長期予報をにらみ、さらにネットやブログで現地の花の情報を得る。自分と同じような人はたくさんいるもので、行って見てきた状況をネットで逐次教えてくれる。日程を決めた後は、運まかせだ。
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(写真2)アオネバ渓谷の登山口
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(写真3)佐渡の最高峰の金北山
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「花を訪ねて何百里」ではないが自分などはまだ駆け出しで、ここ10年以上、静岡から毎年佐渡に通い、早春の山の花の写真を撮り続けている人がいる。そんな熱烈な愛好家からみれば私などが「病膏肓に入る」などと言うのはおこがましいかもしれない。その愛好家のブログを読むと、花はまさに恋人であり花に寄せる優しい目があふれている。愛情を込めてシャッター押すだけに掲載された写真の中の花もそれに応えるかのように輝いている。自分のそれとは比べようもない。
静岡を前夜に出て新潟から早朝のフェリーに乗り、両津に近いアオネバ渓谷の登山口に着いたのは午前9時ちょっと前だった。佐渡はまさに春爛漫。数日間続いていた雨雲が切れ、満開の桜に暖かい陽ざしが降り注いでいた。「ラッキー」と快哉を叫びながら登山口駐車場の隣の車を見ると静岡ナンバーだった。「エッ、隣も静岡」と驚いてその車から降りてきたご夫妻に声を掛けた。「私も静岡からです。天気が良くてよかったですね」「私たちは焼津から。佐渡に滞在して1週間。今日、ようやく天気がよくなったのでここに来ました」。花好きも上には上がいる。
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(写真4)咲いたばかりのシラネアオイ
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(写真5)珍しい白い花のカタクリ
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アオネバ渓谷はさながら花の回廊だった。ニリンソウにはじまりキクザキイチゲ、カタクリ、エンレイソウ、エンゴサク、フクジュソウ、ヒロハノアマナ、ショウジョウバカマと次々に姿を見せる。スミレは種類が豊富だ。スプリングエフェメラルの代表、オオミスミソウも今を盛りと咲き誇っている。同じ新潟県の弥彦山や角田山のオオミスミソウと比べピンクや紫など色が豊富で鮮やかだ。株も大きい。この小さな花が大の男たちをも魅了するのだから不思議だ。
「まだ早いかな」と思いながらも期待したシラネアオイも咲いていた。花の素晴らしさに魅せられて定年退職後、5年ほど前に本土から佐渡に移り住んだという登山者が「2日前に来たときにはシラネアオイはまだ咲いていませんでしたよ」と教えてくれた。天気といい、花の開花状況といい本当に恵まれた。
登山口からの標高差約470メートル。ゆっくり歩いても2時間という尾根筋のアオネバ十字路(標高767メートル)に着いたのは正午。花を愛で、写真を撮りながらゆっくりゆっくりの3時間だった。尾根筋にはまだかなりの雪が残っていた。
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(写真6)ショウジョウバカマ
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峠で弁当を広げていると隣の女性のグループから「静岡からですね。先月、弥彦山で会いました」と声を掛けられてびっくり。確かに弥彦山で地元新潟の女性グループと「花がきれいですね」とあいさつしたことがあった。そのグループとまたまた一緒になったのだ。何という偶然なのだろうか。女性グループは静岡の山にも何度か登りに来たという。「静岡の山に登って富士山が見えないとがっかりする。いつも富士山が眺められる静岡はいいですね」。
山の花が美しい新潟、霊峰富士のある静岡。お互いに地元の素晴らしい山を称えてエールを交換、花の回廊を下った。
(O.K=静岡市在住)