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(写真1)露に濡れるハヤチネウスユキソウ
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「エーデルワイス」といえばヨーロッパアルプスを代表する高山植物だ。映画「サウンド・オブ・ミュージック」の中で「エーデルワイスの歌」が流れ、一般にも良く知られている。名前の由来の通り高貴な白い姿はアルピニストの憧れの花でもある。スイスの国花となっており、数年前、スイスアルプスのトレッキングを楽しんだ際、探したが出会えなかった。地元のガイドによると心無い盗掘に遭って自然のものはほとんど見られなくなったという。見ることができたのは花屋の店頭とツェルマットの墓地に植えられていたものだった。
わが国ではエーデルワイスに最も近縁の花にハヤチネウスユキソウがある。早池峰山(岩手県、1,917メートル)の固有種として登山者の人気が高い。早池峰山の近くには高山植物の女王と呼ばれるコマクサの群落で知られる岩手山(2,038メートル)がある。7月初旬、人気の花を求めて陸奥の山旅に山の仲間と出かけた。
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(写真2)ハヤチネウスユキソウなどの花畑
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(写真3)ガスに包まれた早池峰山山頂 |
梅雨前線が活発化し、九州での大雨を伝えるラジオのニュースを聞きながら到着した早池峰山の小田越登山口では晴れ間も見えた。登山道は樹林帯から間もなく視界が開け、岩の積み重なる斜面に出る。そこから高山植物のパレードが始まる。ミヤマオダマキ、ミヤマアズマギク、ナンブトラノオ、ミヤマシオガマ、ハクサンチドリなどが次々と出迎えてくれる。目指すハヤチネウスユキソウも姿を見せた。最初の一花は探し求める登山者をじらすかのように登山道からちょっと離れた岩の下に隠れるように咲いていた。
早池峰山に、珍しい独特の高山植物が育つのは「蛇紋岩」と呼ばれる強い酸性の岩が露出している土壌のためという。滑りやすい蛇紋岩の登山道に気をつけながら高度を上げるにつれ、ハヤチネウスユキソウが次々と目の前に現れた。白い綿毛をまとって朝日に輝く姿は「天の星がアルプスの山に落ちて花となった」というエーデルワイスの伝説を思い起こさせた。
花畑が続く登山道の両側にはロープが張られ、自然保護監視員も出ている。貴重な植物を守るためには無粋なロープも仕方がないのだろう。ロープに挟まれた登山道に導かれ、大きな岩をハシゴで乗り越えて出発から2時間余。到着した山頂はガスに覆われ、北上山地最高峰からの展望はなかった。しかし、岩陰に楚々と咲くハヤチネウスユキソウは、ガスの中で一層の美しさを誇っているように見えた。
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(写真4)焼走りコース登山口から仰ぐ岩手山
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(写真5)高度感のある岩手山山頂
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翌日の盛岡地方は快晴に恵まれ、南部富士・岩手山は長い裾野を引いて秀麗な姿を見せていた。「盛岡の風景は岩手山によって生きている。一つの都会に一つの山がこれほど大きく力強く迫っている例は、他にないだろう」と深田久弥は著書「日本百名山」に記した。
生まれてから約20年間、岩手山を仰いで過ごした石川啄木にとっても岩手山は心の故郷だった。「かにかくに渋民村は恋しかり おもひでの山 おもひでの川」「ふるさとの山に向ひて 言ふことなし ふるさとの山はありがたきかな」と故郷への思いを歌に込めた。岩手山はまさに盛岡のシンボルなのである。
その岩手山へは二度目の登山。前回も好天でコマクサがきれいだっただけに期待が高まる。焼走りコース登山口の広い駐車場は、コマクサを求めて訪れた登山者の車やバスでいっぱいだった。
溶岩流に沿って樹林帯を抜け砂礫地に出ると期待に違わずコマクサが群落をつくっていた。山頂から流れ落ちる砂礫の斜面に点々とピンクの花束を風に揺らせている。火山灰の厳しい環境の中で、懸命に生きる姿が登山者の共感を呼ぶのだろう。しかし、その人気ゆえにその数を減らしているように見えた。前回、登山道から手にとることができるところにあった株が少なくなり、新たにロープが張られていた。
360度大展望の山頂はツアー登山者などで大にぎわいだった。前日登った早池峰の山並みを遠く望み、足元には啄木の故郷が広がっていた。陸奥の花の山旅は、満足の前に大が二つも三つもつくものだった。
(O.K=静岡市在住)