ShizuokaOnline
オリジナルコンテンツ

ShizuokaOnlineのオリジナル企画。デジ記者が旬な話題を動画を交えてレポートします。New!  
「大人」の読者にじっくり味わってもらいたいニュースが満載。「寄稿・わが至福の時」も好評です。
静岡県内の大学の話題は「キャンパス・ナビ」でチェック!
県内トップアスリートに迫る動画インタビューをお届けします。 NEW!
子育て世代に役立つ話題満載の交流広場です。
最新情報やニュースをケータイサイトでもチェックできます。お得なグルメ情報も掲載!

ポッドキャスティング

47News
家康囲碁道場
静岡ぐるめ探検隊
ShizuokaOnline(静岡新聞社・静岡放送オフィシャルサイト) > おとな派 > おとな派 読み物

おとな派 読み物

【寄稿・わが至福の時】山の花とシカの食害

2007/09/03

(写真1)ヤマハハコ



 秋の山の花を見たくて8月下旬、諏訪湖の北にそびえる高ボッチ山(1665メートル)と尾根続きの鉢伏山(1928メートル)を訪れた。いずれも花の山として、そして北アルプスの展望台として人気が高い。頂上近くまで車で行けることから、だれもが楽しめる身近な花の山となっている。高ボッチ山には冬季、崖の湯温泉から雪道をラッセルしながら登ったことがあり、次は花の時期に訪れたいと思っていた。




(写真2)マツムシソウ

(写真3)シシウドが揺れる高ボッチ高原



 花の時期にはちょっと遅かったかもしれないが、残念ながら期待したほどではなかった。花の種類は多いものの、どれもぽつぽつと咲いている程度で一面のお花畑という光景はない。以前、訪れたことのある山仲間の話や山の本などによると、この時期にはマツムシソウの青紫色の花が波打つように草原に揺れていてもいいはずだった。ところが波打つどころか鉢伏山では鉢伏山荘から山頂までの20分ほどの登山道でマツムシソウを1本も見かけなかった。
  花が少なくなったのはニホンジカの食害が原因のようだ。鉢伏山荘の関係者によると夜になると数頭のシカが現れて草花を食べていくという。シカが近づかないように夜間、照明をつけるなどしているが効果はなく、お手上げだと嘆いた。地元の塩尻市もシカの被害が広がっているのは分かっているが、今のところ具体的な対策はないという。
  高ボッチ山や鉢伏山の山頂付近が草原になっているのはかつて放牧が行われていたため、と地元の登山者が教えてくれた(高ボッチ山には今でも一部牧場が残っている)。放牧が行われなくなっていろいろな草花が復活し、美しい草原がよみがえったことが皮肉にもシカを呼ぶことになってしまったようだ。数年前までは群落をつくったニッコウキスゲも年々姿を消しているという。ニッコウキスゲはシカの大好物だ。「昔は牛の放牧場だったが今はシカの牧場になっている」と地元の登山者は冗談交じりにため息をついた。


(写真4)カワラナデシコ

(写真5)アキノキリンソウ


 シカの食害はなにもここだけの問題ではなく全国に広がっている。静岡県でも植林したばかりの苗木が被害に遭っているほか、南アルプスの高山植物も食べられてお花畑が消えている。かつてはニッコウキスゲなどが咲き誇った聖平のお花畑も今は見る影もない。「何とかしなければ」と立ち上がった南アルプス高山植物保護ボランティアの人たちが聖平の一角に柵を巡らせシカから守ったところ、柵の中で見事にニッコウキスゲがよみがえった、という記事をしばらく前の静岡新聞で読んだ。
  そういえば奈良県の大峰山に登った時は登山道が金網の柵の中を通っていた。大峰山を代表する名花のオオヤマレンゲをシカから守るためだ。厳重に保護された区域内だけに細々とオオヤマレンゲが残っていた。広大な山域をシカの食害から守るのは不可能なことは分かっている。それでも何とか対策が立てられないものかと無理なことを考える。
  野生動物による被害はシカによるものだけではない。サルやイノシシによる農作物への被害も年々大きくなっている。農家や林業家からは「花を守るより生活がかかっている作物を守ってくれ」と言う声が聞こえてくる。
  「どうしてこんなに生態系が崩れてしまったのか」「どうすればいいのか」。原因はいろいろあるだろうし、対策を考えてももちろん名案が浮かぶわけではない。山の花好きとして花を守るために少しでも実行できることは何があるだろうか。鉢伏山を下りながら考えたが「登山道を外れて草花を踏みつけないこと」程度のことしか思いつかなかった。
  マツムシソウの群落は見られず期待したほどではなかったが草原には赤トンボが群れ飛び、ハクサンフウロ、ウメバチソウ、ハナイカリ、アキノキリンソウ、ヤマハハコ、ヤマラッキョウ、トリカブト、ワレモコウ、ヤナギランなどが秋風に揺れて紛れもない花の山だった。

(O.K=静岡市在住)

(写真7)トリカブト
(写真6)ハナイカリ (写真8)ツリガネニンジン

(写真9)筆者の腕に止まった赤トンボ
(写真10)鉢伏山山頂
(写真11)ハクサンフウロ

(写真12)前鉢伏山からの鉢伏山
(写真13)ウメバチソウ
(写真14)ヤナギラン











ここからバックナンバー

バックナンバー

【寄稿・わが至福の時】初秋の奥穂高岳 2008/09/24  
【寄稿・わが至福の時】利根川源流域の最高峰 平ヶ岳 2008/09/08  
【寄稿・わが至福の時】花の大谷嶺に涼を求めて 2008/08/19  
【寄稿・わが至福の時】おしょうしな、飯豊山 2008/07/28  
【寄稿・わが至福の時】岩峰の瑞牆山 2008/06/14  
【寄稿・わが至福の時】早春の戸隠高原 2008/05/29  
【寄稿・わが至福の時】ヒマラヤ・トレッキング(下) 2008/04/20  
【寄稿・わが至福の時】ヒマラヤ・トレッキング(上) 2008/04/04  
【寄稿・わが至福の時】思い出の山行(2)北岳 2008/03/11  
【寄稿・わが至福の時】思い出の山行(1)赤石岳・荒川三山 2008/02/20  
【寄稿・わが至福の時】新聞の旅広告で見つけた冬の山陽・山陰路 2008/02/05  
【寄稿・わが至福の時】正月の山伏 2008/01/08  
【寄稿・わが至福の時】師走の愛鷹連峰歩き 2007/12/15  
【寄稿・わが至福の時】小海線で行く晩秋の軽井沢 2007/11/16  
【寄稿・わが至福の時】紅葉の妙高・火打山 2007/10/19  
【寄稿・わが至福の時】憧れの雲ノ平 2007/09/26  
【寄稿・わが至福の時】いで湯と花と白馬三山 2007/08/13  
【寄稿・わが至福の時】「陸奥花の山旅」 2007/07/17  
【寄稿・わが至福の時】「屋久島・宮之浦岳登山」 2007/06/25  
【寄稿・わが至福の時】「家庭菜園の楽しみ」 2007/06/07  
【寄稿・わが至福の時】「病膏肓に入る」 2007/05/16  
「団塊心模様」 静岡のNPO参加 ゆとり生かし地域支援 2007/05/16  
「団塊心模様」 静岡文芸大4年生 生きがいづくりに先手 2007/05/10  
【寄稿・わが至福のとき】「新潟、早春の花巡り」 2007/04/05  
【寄稿・わが至福のとき】「雪の上高地散策」 2007/03/22  
【寄稿・わが至福の時】「湖西連峰の尾根歩き」 2007/03/15  
【寄稿・わが至福の時】「沼津アルプス」 2007/02/22  
【寄稿・わが至福の時】「冬枯れの山一人歩き」 2007/02/05  
【寄稿・わが至福の時】「2007年も前向きに」 2007/01/10  
【寄稿・わが至福の時】「登山と温泉」 2006/11/28  
【寄稿・わが至福の時】「ゆったり歩きで秋山満喫」 2006/11/14  
【寄稿・わが至福の時】「錦繍の山歩き」 2006/10/24  
「団塊の明日」(4)完 堺屋太一氏インタビュー 「職縁」より同好の仲間 2006/10/18  
「団塊の明日」(3) 妻の起業、夫が後押し 役割分担に変化 2006/10/17  
「団塊の明日」(2) アルバイト 「戦力」活用には課題 2006/10/14  
「団塊の明日」(1) 退職金の投資 老後の夢にリスクも 2006/10/13