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(写真1)野口五郎岳から望むご来光
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北アルプスのほぼ真ん中、黒部川の源流部に広がる溶岩台地の雲ノ平。標高は2500メートルから2700メートルもあり、広さは250ヘクタールに及ぶという。黒岳(別名・水晶岳、2986メートル)、鷲羽岳(2924メートル)、黒部五郎岳(2840メートル)、薬師岳(2926メートル)など3000メートルに近い巨峰群に囲まれた、まさに北アルプスの奥座敷だ。池塘が点在し高山植物の宝庫でもある。
その雲ノ平の各所に「ギリシャ庭園」「スイス庭園」「アラスカ庭園」「日本庭園」などと洒落た名前が付けられている。雲ノ平という名前そのものにも雲上の楽園を思わせる響きがある上に、ロマンチックなネーミングの山岳風景を想像すると、どうしても一度は訪れてみたくなる。山の花の盛りは過ぎたが、夏山シーズンが終わって静寂を取り戻しつつある9月中旬、山小屋泊まり3泊の日程で出かけた。
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(写真2)野口五郎岳から朝焼けの北アルプス北部を望む
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(写真3)ガスが取れて姿を現した槍・穂高連峰
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コースは高瀬ダムからブナ立て尾根を登り野口五郎小屋に1泊。翌日、野口五郎岳(2924メートル)、黒岳、鷲羽岳に登り、祖父岳(2825メートル)を経て雲ノ平に入る。3日目は雲ノ平山荘から雲ノ平を散策して薬師沢に下り、太郎平小屋に登り返す。最終日に太郎平から薬師岳をピストン、折立に下山する。秘境・雲ノ平へはどこから登るにしても途中で1泊しなければならない。苦労しなければ辿りつけないだけに、山好きには余計に憧れるものがあるのだろう。
初日はまずまずの天気に恵まれて急登のブナ立て尾根を快調に登る。ゴゼンタチバナ、ナナカマドの赤い実、ツバメオモトの青い実、シラタマノキの白い実、クロマメノキの黒い実が秋を告げている。2日目の野口五郎岳への登りでは見事な朝焼けに目を奪われた。水晶小屋へ続く尾根からは遠く槍ヶ岳を望むことができ、この日の好天を疑わなかった。しかし、黒岳から鷲羽岳に向かう頃から槍ヶ岳がガスの中に姿を消し、鷲羽岳山頂では強い風と雨に見舞われて早々に退散。祖父岳から雲ノ平に下った。
風は収まったものの時折小雨がぱらつきガスが流れる中、辿りついた憧れの雲ノ平は秋色を深めていた。花を散らした高山植物は葉が黄色や赤に色づき、点在する池塘の水面は雨空を映して鈍く光っていた。広大な溶岩台地に岩と針葉樹、ハイマツ、高山植物、そして池塘が織りなす景観は、荒々しい北アルプスの真ん中にあって女性的な優しさを見せ、雲上の楽園を実感させるものだった。ただ、雲ノ平を取り囲む山々は白いベールに包まれたままで姿を見せず、「スイス庭園」ではスイスの山岳風景を連想させるような景観を目にすることができなかったのは残念だった。
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(写真4)鷲羽岳を正面に水晶小屋への稜線を行く
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(写真5)祖父岳から雲ノ平へ下る
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その日の宿は「ギリシャ庭園」にある雲ノ平山荘。山荘に落ち着いて間もなく強い雨が降り出した。夕食までには間がある。談話室で仲間が持参のコンロを使って湯を沸かし、コーヒーを淹れてくれた。温かくておいしかったこと。同時に山談義に花が咲く。「なぜギリシャ庭園、スイス庭園なのか」。だれも分からず山荘の従業員に聞いてみた。雲ノ平の素晴らしさを紹介し、山荘を開いた経営者が名付けたとのことだったが、「なぜここがギリシャで向こうがスイスなのか」は分からなかった。でもそれを詮索する必要はないのだろう。そのロマンチックなネーミングが雲ノ平の魅力を広め、人気を高めたのは間違いないことだった。
翌日も深いガスが溶岩台地を包み込み、木道の先にぼんやりと浮かぶ「アラスカ庭園」「奥日本庭園」が幻想的な光景を見せていた。ガスが晴れる様子はなく早々と雲ノ平を後にして昼前には太郎平小屋に到着。ビールを飲みながら小屋の本箱から持ち出した池波正太郎の時代小説を読むという贅沢な時間の流れに身をゆだねた。
最終日は好天となり薬師岳から360度の展望を堪能、折立に下った。
憧れの雲ノ平は滞在中、一部の姿しか見せてくれなかった。文字通り白い世界が似合っているから雲ノ平なのかもしれない。
(O.K=静岡市在住)
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| (写真6)秋色濃い雲ノ平を行く |
(写真7)ギリシャ庭園にある雲ノ平山荘に向かう |
(写真8)アラスカ庭園 |
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(写真9)薬師岳山頂からの剣岳(左)と立山
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(写真10)薬師岳山頂からの雲ノ平。その向こうに槍・穂高連峰がそびえる
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(写真11)ゴゼンタチバナの赤い実
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(写真12)ツバメオモトの青い実
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(写真13)シラタマノキの白い実
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(写真14)クロマメノキの黒い実
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(写真15)ナナカマドの赤い実
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(写真16)季節はずれのチングルマの花。葉は赤く色づいている
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