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おとな派 読み物

【寄稿・わが至福の時】新聞の旅広告で見つけた冬の山陽・山陰路

2008/02/05

(写真1)美しい宍道湖の夕景

 最近の新聞には毎日必ずといっていいほど旅行の広告が掲載されている。日によっては広告全体の7―8割を旅行関連が占めるのではないかと思われることもある。これほどの掲載があるということは、当然お客さんもそれだけあるということなのだろう。多彩な旅行企画で手軽に旅を楽しめるようになったことは間違いない。
  以前からこれほど多くの旅の広告が掲載されていたのか思い出せないが、掲載されていたとしても仕事をしていた頃はあまり目が行かなかった。ところが定年退職して時間に余裕が持てるようになってよく目に入るのだ。各社がコースや見所づくり、価格設定に知恵を絞っているのを見比べていると「うーん、これはよさそうだな。行ってみるか」とついつい引き込まれてしまう。広告の効果は大きい。
 定年退職後、時間のゆとりができたら何をしたいか、とのアンケートの上位に常に旅が挙がる。団塊の世代の大量退職期にあって旅行業界がさまざまな企画を打ち出し、手ぐすね引いて待っているのだ。それにたびたび射止められて業界を喜ばせている。1月下旬の山陽・山陰の旅も新聞広告を見て旅心をかき立てられた。

(写真2)プロの案内をしてくれたガイドさん。
広島の平和祈念公園で

(写真3)姫路城の天守閣からの眺め



 旅にはこうしたパック旅行に対して個人の手づくり旅行がある。それぞれにメリット、デメリットがあり、目的によって使い分けてはいるが、単に観光を目的とした旅行はパック旅行が断然便利であることは間違いない。今回の山陽・山陰の旅も姫路、倉敷、尾道、広島、宮島、津和野、萩、出雲、松江などの見所を効率よく回った。公共交通機関を利用した個人旅行で同じコースを回るとしたら日数も費用も数倍かかる。
 「人はなぜ旅をするのか」との問いに「未知のものに触れる喜びがある」「新しい出会いや発見、感動を求めて」「日常からの脱出、逃避」などがよく言われる。確かにその通りだろうが、知らない土地を訪れるということだけで楽しい。「倉敷の美観地区って騒ぐけど、どんなところなの」「津和野の古い町並みってそんなに情緒があっていいところなの」。本で読んでもテレビで見ても、それは他人が感じたことを伝え聞いたり見たりするのであって、自分がどう感じるかは訪れてみなければ分からない。
 パック旅行では地元の人たちとの触れ合いは期待できず、表面をなぞることしかできない。それでも「もう少し素晴らしいところかと思ったが、それほどではなかったな」「いや想像していたよりずっとよかったよ」と分かっただけで旅の目的は達成されたのだ。「もう一度ゆっくり訪れたい」というところがあれば次は個人で行けばいい。



(写真4)古い町並みが美しい倉敷の美観地区

(写真5)大原美術館の美しい庭園



 今回の旅は広島、宮島を除いて姫路城、倉敷の美観地区、津和野の殿町、萩の松陰神社、出雲大社など初めての訪問で、いずれも一度は行ってみたかったところだ。旅館もまずまずで全体を通して決して悪い旅ではなかったが、強く印象に残ったところもなかった。目的の観光地よりも通りすがりに見た宍道湖の夕景や日本海沿いの道路脇の斜面に広がるスイセンの群生などの自然に心を動かされ、7年前に登った伯耆大山が雪雲に隠れて姿を見せてくれなかったのが残念だった。やはり自分は史跡・旧跡などの歴史探訪より自然探訪の方が向いているようだ。
  そんな中で一つ印象に残ったことがある。4日間を通して案内役を務めてくれた地元バスガイドの博識ぶりだ。歴史から自然からまあ実に色々なことをよく知っていて長い道中を決して飽きさせなかった。静岡の客と聞いて「蒲原町も合併して静岡市の人口は70万人を超えたのですよね」と話し掛けられ「よく知っていますね」と驚いた。静岡県のことを逆に教えられるほどで、ただ感心するばかりだった。北海道を除く全国がテリトリーといい、その物知り、案内ぶりはまさにプロだった。
  「あんなガイドさんに案内されたら楽しいな」と思い返しながらまた新聞の旅の広告を熱心に見ている。

(O.K=静岡市在住)




(写真6)光の海に浮かぶ安芸の宮島の大鳥居 (写真7)明治維新胎動の地となった松下村塾 (写真8)参拝者でごった返す出雲大社











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