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おとな派 読み物

【寄稿・わが至福の時】ヒマラヤ・トレッキング(上)

2008/04/04

 天空に届かんばかりの8000メートルの頂を14座も連ねる世界の屋根・ヒマラヤ。標高が富士山の倍以上もある8000メートルの高峰はヒマラヤをおいて他にない。山好きにとってヒマラヤの高峰は、登れなくても一度は目にしたい憧れの山だ。登山とトレッキングの専門旅行会社の企画に乗ってネパールのヒマラヤ・トレッキングを楽しんできた。ネパールに隣接する中国チベット自治区ラサでの大規模な暴動の影響をちょっと心配しながら3月中旬、成田から香港乗り継ぎで首都カトマンズに入った。
 今回のトレッキングはアンナプルナとダウラギリの巨峰群を眺めるロッジに5連泊のコース。カトマンズから空路ポカラに入り、ポカラからバスに乗ること約1時間でトレッキングのスタート地点ルムレに到着した。

朝焼けのダウラギリ


ルムレの登山口。ここからトレッキングが始まる

エベレストに6回登頂というサーダーのパッサンさん

 トレッキングの参加者は15人と日本人のリーダーが1人。これに現地で合流したサーダー1人、シェルパ5人、コック1人、キッチンスタッフ7人、ポーター14人の計28人が支援スタッフとして同行する。サーダーは現地スタッフの統括責任者だ。わがグループのサーダーを務めてくれたパッサン・キダルさん(29)はシェルパとしてエベレストに8回挑戦し、6回頂上に立ったというシェルパの大ベテランだった。
 ルムレからトレッキング初日の宿泊地チャンドラコットまでは足を慣らしながらゆっくり1時間。足元からは山の急斜面に数えきれないほどの段々畑が谷の底まで刻まれ、山奥に暮らす人びとの苦労がしのばれた。
 期待した山岳景観に出会ったのはトレッキング3日目の朝。前日から山嶺を包んでいた雲のベールがはがれ、ガンドルンのロッジの目の前にこれまで見たこともない7000メートル峰の大展望が広がった。アンナプルナ・サウス(7219メートル)とマチャプチャレ(6993メートル)だ。アンナプルナ・サウスのたおやかな峰は神々しいまでに白く輝き、白鳥が羽を広げたような優雅な姿が見るものを圧倒した。対照的にマチャプチャレの鋭鋒はまさに名前の通り天に突き上げる“魚の尻尾”だった。
 ガンドルンからタダパニ、そしてゴラパニへ辿る3000メートルの尾根道は大木のシャクナゲ街道。シャクナゲはネパールの国花だ。ちょうど見ごろを迎えた真っ赤な花が頭上を飾り、遠くの山肌を赤く、そしてピンクに染め上げていた。

 山岳展望のハイライトはトレッキング5日目のプーンヒル(3194メートル)での夜明け。午前5時前にゴラパニのロッジを出てヘッドランプを頼りに登ること約1時間。プーンヒルは夜明けの大展望を期待する各国のトレッカーでいっぱいだった。星空の下、世界7番目の高峰・ダウラギリ(8167メートル)からアンナプルナ山群の大パノラマが黒くシルエットで広がっている。「これなら日の出と共に素晴らしい景観が期待できる」。胸が高鳴った。
 午前6時過ぎ、ダウラギリの山頂部がポッと赤く染まった。トレッカーから「ウォー」という歓声とも、ため息ともつかない声が漏れる。山頂にともった赤い炎は切り立った斜面を駆け下るように広がり、ダウラギリ山群の頂に次々と赤い火をともしていった。目を転ずると透き通った空気の向こうにアンナプルナ山群からマチャプチャレまでの山並みがくっきりと浮かび上がっていた。
 大展望に恵まれた興奮の余韻にひたりながらゴラパニのロッジに下る途中で、ダウラギリに雲がかかり始めた。目に焼きついた朝焼けのダウラギリがそれに重なり、心の中で素晴らしい光景を何度も何度も反芻していた。
 トレッキングはいよいよ終盤。ゴラパニの峠で山岳展望と別れ、かつてチベットとインドを結ぶ交易路として栄えたジョムソン街道をひたすら下り、ロッジ泊最後のヒレヘ。夕食後開かれた支援スタッフへのお礼のパーティーではネパールの明るい歌と太鼓のリズムに乗って踊るスタッフの輪に参加者も加わり、交流の踊りが夜更けまで続いた。

(O.K=静岡市在住)

朝日に輝くアンナプルナ・サウス

魚の尻尾を意味するマチャプチャレ


山の斜面に開かれた集落の中を歩く

アンナプルナ・サウス(左)とマチャプチャレ(右)

満開のシャクナゲの大木


夜明け前のアンナプルナ山群とマチャプチャレ(右)

プーンヒルで大展望を楽しむ人たち

お礼のパーティーで踊りを楽しむスタッフ


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