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おとな派 読み物

【寄稿・わが至福の時】岩峰の瑞牆山

2008/06/14

 「瑞牆山」と書いて「みずがきやま」と正しく読める人は、かなりの山好きだろう。「瑞」は読めても「牆」はとても読めない。これまでは「難しい読みだが、響きのいい素敵な山名だ」くらいにしか思っていなかった。この原稿を書くのにあたり「牆」の意味を調べようと、わが家の漢和辞典を開いたが載っていないではないか。それほど難しい字なのかと図書館に行って調べたところ「垣」「障」と同じ意味で垣根や土塁などを表すとあった。
 地元の山梨県北杜市のHPには山名の由来について「みずがきとは神社の周囲に巡らす垣根のことで、もともとは瑞垣とも瑞塁とも書く」とあるが、なぜこの山を「みずがき」と呼ぶようになったかは今ひとつ明確ではない。
 日本百名山の著者、深田久弥も瑞牆山の項で名前の由来を考察し、自分なりの推察を示している。しかし、きちっとした結論は出せず「由来はどうでもあれ、瑞牆という名は私は大へん好きである。そしてこの名はこの山にふさわしいと思う」と由来の追究をあきらめている。
瑞牆山山頂付近の岩峰

瑞牆山山頂付近の岩峰


瑞牆山荘前の登山口

瑞牆山荘前の登山口

緑のシャワーを浴びて登る

緑のシャワーを浴びて登る

 山名の難読さもさることながら、巨大な岩峰が林立したような姿の特異さもこの山の大きな特徴だ。遠くから見ると「あの岩峰群のどこに登山道がついているのか。ロッククライミングをしない一般の登山者でも登ることが出来るのか」と心配になってしまう。奥秩父の西端にあって、山全体が花崗岩というのも秩父連山の中では特異な存在だという。
 その瑞牆山(2230メートル)に初めて登ったのは15年前の秋だった。韮崎から増富温泉を通り瑞牆山荘前の登山口へと向かう車に、色づいたカラマツの葉が降り注いできたのを覚えている。山頂に立つと眼下は黄金色の海がうねっているようだった。そして2度目の今回は青葉輝く梅雨入り直前の6月初め、山の仲間とともに訪れた。
 前回と同じコースで瑞牆山荘前から富士見平を経て天鳥川を渡り、ハシゴやロープに助けられながら岩峰群を縫うように山頂を目指す。標高約1500メートル登山口から約1800メートルの富士見平までは樹林帯の登りが続く。見事なミズナラの巨木の林が天空を被い、若葉を透かして降り注ぐ光のシャワーで全身が緑色に染め上げられていくようだ。名残のミツバツツジの花も主役を若葉に奪われて、散りゆく直前の最後の輝きを見せていた。

 コメツガなどの針葉樹林帯に変わった登山道は、いったん天鳥川に下る。ここからが岩山の本格的な登りだ。見事に真ん中で割れた巨岩・桃太郎岩横のハシゴから取り付き、手も活躍を始める。咲き始めのアズマシャクナゲにカメラを向け、一息入れていると下山者が「頂上は登山者であふれ返っているよ」と教えてくれた。遅い時間からの登りのため下山者とのすれ違いが大変だ。佇立する巨岩が目の前に現れるようになると、山頂は近い。
 岩峰の山頂はその高度感に足元がすくむ。腹ばいになって恐る恐る覗く足元の直下に瑞牆山の象徴、大ヤスリ岩がそそり立つ。その垂直の岩肌に取り付くクライマーが米粒のように見える。残念ながら富士山は雲の向こうだったが、金峰山から八ヶ岳にかけての見事な展望が広がっていた。
 大賑わいの瑞牆山で驚いたのは若い登山者が目立ったことだ。今や山はどこも中高年に占拠されてしまった感がある中で、この日は若者が幅を利かせていた。「嬉しいね。山で若者に会うのは。頑張れよ」。われら中高年グループの仲間が声を掛けると「おじさんたちも頑張って」と若い女性のグループに励まされた。山も登山者が中高年ばかりではつまらないのではないだろうか。多くの若者を迎えたこの日の瑞牆山が、何となく華やいで見えたのは気のせいだろうか。

(O.K=静岡市在住)

光を通して輝くミツバツツジ

光を通して輝くミツバツツジ

山小屋の立つ富士見平

山小屋の立つ富士見平

見事に割れた桃太郎岩
見事に割れた桃太郎岩
ピンクのアズマシャクナゲ
ピンクのアズマシャクナゲ
巨岩が現れると山頂は近い
巨岩が現れると山頂は近い
高度感あふれる山頂。向こうは八ヶ岳連峰
高度感あふれる山頂。向こうは八ヶ岳連峰
瑞牆山の象徴、大ヤスリ岩
瑞牆山の象徴、大ヤスリ岩
山頂から続く岩峰と金峰山
山頂から続く岩峰と金峰山


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