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おとな派 読み物

【寄稿・わが至福の時】雪の大日ヶ岳と春の里山

2009/03/25


 冬の山歩きは寒いし、雪山は不慣れな者にとっては危ないからあまり出かけたくない、というようなことを「東海自然歩道を歩く」で書いていたのに何だ、と叱られそうだが山の仲間に誘われて3月中旬、岐阜県・奥美濃の大日ヶ岳(1709メートル)に雪山歩きを楽しんできた。加賀の名峰・白山を展望する大日ヶ岳には2003年6月に訪れたことがある。この時は雪の消えたスキー場のゲレンデを、汗を拭き拭きワラビなどの山菜を摘みながら登ったことを覚えている。

 今回はスキー場が営業中で、ゴンドラやリフトが運転されており、これを利用して1500メートル付近まで楽々登山となった。好天に恵まれてスキー場は大にぎわい。スキー板やスノーボードを手にした若者に交じってゴンドラに乗り込むリュックを背にした中高年の登山グループは、まるで場違いなところに迷い込んでしまったようだった。ゴンドラ終点から繁華街のようなにぎわいを離れると白銀の山は静かな登山者の世界に変わった。

大日ヶ岳山頂からの白山(右)と別山


ゴンドラの終点から雪の斜面に踏み込む

輝く雪の斜面

 前日に降った新雪がキラキラと輝き、踏み出すごとに足首まで沈む。しかし、下の雪がほどよく締まっているため、持って行ったカンジキを着ける必要はない。積雪は優に1メートルはあろうか。夏道や斜面を覆うササは雪の下。山頂に続く尾根筋をまっすぐに進むことができる。雪山ならではの歩きだ。山頂直下では霧氷に覆われた潅木と青空との見事なコントラストに目を奪われた。

 歩き始めて約1時間。広々とした山頂では胸まで雪に埋もれた大日如来像が顔だけをのぞかせていた。360度の展望が広がる雪原のずっと向こうには、真っ白な白山が別山を従えたように輝く。「冬山は寒いから嫌だ」などと言っていたのでは得られない景観に、目頭が熱くなる思いでカメラのシャッターを押した。暖かな日差しはあるものの、冷たい風が吹き抜ける山頂はじっとしていると寒い。風下の斜面に風をよけて一休みし、来た道を引き返した。

 久しぶりの雪山を満喫し、アイゼンを効かせながら快調に下りながら思った。好天に恵まれたからこそ無事に登ることが出来たが、これが吹雪だったら、吹雪でなくてもガスが出て見通しが利かなかったらどうだろう。雪がなく登山道が出ていればガスで見通しが利かなくても登ることが出来るだろうが、白一面の雪山ではよほどその山を知らなければ危険で無謀な登山となる。荒天だったらとても登ることが出来なかったと考えると、この日の好天に手を合わせたくなった。

 雪山から今度は春の里山に触れてみようと帰途、東名高速道を豊川インターで降りて豊橋市のカタクリ山に立ち寄った。まだちょっと早いかなと思ったカタクリだが、山の斜面の所々に薄紫の可憐な花を揺らしていた。盛期までには数日かかりそうだったが、目を楽しませてくれるには十分だった。

 このカタクリ山は山の所有者が自生株を少しずつ増やしていった結果、現在の見事な群生地になったという。所有者の好意でカタクリの開花期に山が開放され、訪れる人が年々増えている。カタクリに交じってイチリンソウやヒロハノアマナなどのスプリング・エフェメラルも夕陽に輝いて本格的な春の訪れを告げていた。

 冬山と春山を一日で体感した至福の一日だった。

(O.K=静岡市在住)

大日ヶ岳山頂(右)に向かって快調に登る

雪に埋もれた大日ヶ岳山頂の大日如来像


大日ヶ岳山頂からの白山(右)と別山

青空に輝く樹氷


芸術作品を見るような樹氷

スキー場に向けて快調に下る

豊橋市のカタクリ山斜面

白い清楚なイチリンソウ

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