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おとな派 読み物

【寄稿・わが至福の時】 安倍川右岸の二王山、見月山

2009/05/03

 静岡市の安倍川流域には標高1000メートルを超える山々が連なり、手近に楽しめる山としてハイカーの人気が高い。市街地に最も近い竜爪山(1041メートル)から安倍川左岸に沿って北に真富士山(1343メートル)、青笹山(1550メートル)、十枚山(1719メートル)、大光山(1661メートル)、そして安倍川源流域の八紘嶺(1918メートル)、大谷嶺(1999メートル)、山伏(2013メートル)と続く。いずれも静岡市街地から日帰りができる。これまでにどれくらい楽しませてもらったことだろうか。身近に素晴らしい山があることに感謝してきた。
 ところが同じ安倍川流域でも右岸側の山には、とんと足が向かなかった。右岸側の代表的な山に二王山(11208メートル)と見月山(1047メートル)がある。山のガイドブックにも取り上げられてはいるが、左岸側の山ほどではなく、ハイカーの間でも人気はあまり高くない。私も「安倍奥にでも行ってくるか」という時、二王山や見月山はいつも対象に入ってこなかった。

二王山山頂から望む雪の大谷嶺


奥仙俣からの二王山登山口

朽ちた丸太橋を慎重に渡る

 その二王山と見月山に、山の仲間と登る機会を得た。仲間の中にかつて登ったことのある者がいたが、それも20年以上前のことという。久しぶりに登ってみようかと、誘ってくれた。
 二王山に登ったのは3月初めのこと。安倍街道の湯の森からの登山道を往復するのが一般的だが、この日は奥仙俣の集落から登り、湯の森に下るコースをとった。この山道は二王山を挟んで安倍川側の湯の森の集落と中河内川上流の奥仙俣の集落とを結ぶ生活道として古来より開かれたという。奥仙俣集落の外れの橋の脇に登山道入り口を示す小さな標識が立っていた。
 朽ちて今にも沢に落ちそうな丸太橋を渡り、人工林の急斜面に取り付く。はっきりしない道をテープに導かれて稜線に出ると、安倍川を挟んで対岸の山並みを望むことができた。稜線の道もあまり歩かれていないようで、二王峠から山頂へ向かう登山道の残雪に踏み跡はなかった。樹林に囲まれた山頂からの大展望はなく、樹木の間から雪を頂いた大谷嶺から八紘嶺にかけての稜線を望むことが出来ただけだった。山頂から湯の森へは良く踏まれた道で1時間半ほどで安倍街道に降り立った。

 それから1カ月後の4月上旬、見月山に登った。見月茶屋脇の登山口からいきなりの急登で息が弾む。人工林の中をジグザグに延びる登山道からの展望はまったくなく、目印のテープを頼りにひたすら上を目指す。途中、唯一ミツマタの淡い黄色の花が一息つかせてくれた。
 植林の中の山頂からも見晴らしはない。いつごろまで役目を果たしたのだろうか。山頂から50メートルほど先に、朽ち果てた気象観測用のロボット小屋がポツンと立っていた。
 下山は稜線を北に進み、中平の集落を目指す。道はササに覆われ、倒れかけた獣の防護ネットにも阻まれて、藪こぎを強いられる。稜線をはずさないよう慎重に下り、明るく開けた送電線の鉄塔下まできたら、中平への道標が立っていた。
 二王山、見月山とも、安倍川流域の身近な山の一つとして、一度は登ってみたいと思っていた。初めて登ってみて地味で静かな歩きが出来る山ではあったが、魅力を感じる山ではなかった。山に行ったら豊かな自然や花、景観を楽しみたい。安倍川左岸や安倍川源流域の山にはそれがある。近くにそうした山がなければ二王山も見月山も、もっともっと人気が高まったであろうことを考えると、不遇な山なのかもしれない。

(O.K=静岡市在住)

二王山山頂

安倍街道脇の見月山登山口


薄い黄色のミツマタの花


展望のない見月山山頂


気象観測用ロボットがあった小屋

獣の防護ネット脇の藪こぎ

稜線を離れて中平への下山路を示す道標

送電線に沿って中平へ下る


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