ShizuokaOnline
オリジナルコンテンツ

「大人」の読者にじっくり味わってもらいたいニュースが満載。「寄稿・わが至福の時」も大好評
静岡県内の大学の話題は「キャンパス・ナビ」でチェック!
子育て世代に役立つ話題満載
★ハッピース!!プロジェクト「子育て来楽部」公式サイト
最新情報やニュースをケータイサイトでもチェックできます。お得なグルメ情報も掲載!
SBSショッピング
テレモノ
お薦めの一冊

ポッドキャスティング

47News
家康囲碁道場
静岡ぐるめ探検隊
ShizuokaOnline(静岡新聞社・静岡放送オフィシャルサイト) > おとな派 > おとな派 読み物

おとな派 読み物

【寄稿・わが至福の時】花の鳥海山、月山

2009/08/26

 この夏の東北地方は、梅雨明け宣言が出されないまま8月7日の立秋を迎えた。もっとも、梅雨明け宣言が出された関東・甲信や東海、北陸地方以西でも、宣言が出された後、大雨が降るなどスッキリした夏空はなかなか現れなかった。「梅雨明け十日」という言葉がぴったりの盛夏到来は、どうやら過去のことになってしまったように思えてならない。梅雨明け宣言を待って「いざ夏山へ」と心を躍らせていた山好きにとって、この夏もなんとなく意気込みをそがれるような幕開けとなった。
 東海地方の梅雨明けも例年になく遅れる中、立秋の鳥海山(2236メートル)と月山(1984メートル)の登山を予定していた。「いくら遅いとはいえ、立秋までには東北の梅雨も明けるだろう」と夏空の出現を楽観視していたが、明けないまま立秋を迎えて今年の宣言は見送りに。立秋の翌日、パッとしない天気予報に今ひとつ気持ちの高ぶりがないまま、鳥海山の鉾立登山口に立った。

花畑の向こうに浮かぶ鳥海山


残雪の斜面に咲くトウゲブキと鳥海湖

岩場をよじ登って山頂へ

 山形、秋田両県にまたがる鳥海山、山形県の月山は高山植物が豊富な花の山として知られる。いずれも10年以上前に登ったが、どちらも花の適期ではなく鳥海山は小雨とガスで展望もなかった。それだけに花の見ごろにもう一度、と機会を狙っていた。とはいえ静岡からは遠い。1人で車を運転していくのはちょっと大変だ。花の時期に両山を訪ねるツアー登山があるのを見つけ、参加することにした。北海道のトムラウシ山での大量遭難事故を受けてツアー登山には厳しい目が向けられているが、その便利さはやはり捨てがたい。
 天気に恵まれなくても花だけは、との思いを込めての出発を前に、登山口で合流した地元の登山ガイドの説明に期待が一気に膨らんだ。「皆さんは今シーズンで一番の花の時期に来ました。今日は少なくとも50種類以上の花が見られるでしょう」
 コースは鉾立から賽ノ河原、御浜小屋、七五三掛、千蛇谷を経て山頂直下の大物忌神社、最高峰の新山に登る。最も代表的なコースで、変化に富み、鳥海山の魅力を堪能できるという。ガスが流れるものの雲は高く、時折、山頂も姿を見せる。良く整備された石畳の登山道が賽の河原に近づくと花の姿が多くなる。イワイチョウ、コバイケイソウ、ヨツバシオガマ、チングルマ、ウサギギクと写真撮影に忙しい。残雪が光る山肌にニッコウキスゲの黄色が鮮やかだ。
 「今が一番の花の斜面に行ってみましょう」とガイドが案内してくれた鳥海湖を見下ろす尾根筋に参加者から歓声が上がった。ハクサンシャジンやトウゲブキ、コバギボウシ、シロバナトウチソウなどが群生し、斜面を埋め尽くしている。ガスが流れて花畑の向こうに浮かぶ山頂の光景は、いつまでも飽きることのない眺めだった。

 足場の悪い千蛇谷から雪渓を登り標高2000メートル近くになるとイワギキョウ、イワブクロ、アオノツガザクラ、ハクサンイチゲなどが姿を見せ、花の様相も変化する。鳥海山の特産種で絶滅危惧種に指定されているチョウカイフスマも小さな群落をつくっていた。星の形をした白い小さな花は際立って目を引くものではないが、この花を見たさに訪れる登山者も多いという。もう一つの特産種で、やはり絶滅危惧種のチョウカイアザミも登山道脇に見られたが、地味な花であった。
 大物忌神社から新山山頂へはザックをデポし、両手も使っての岩登り。岩の山頂が狭いため直下は登山者の渋滞が続く。前回と同様、山頂からの展望はなく、順番待ちの記念撮影でシャッターを一枚だけ押してもらい、そそくさと山頂を離れた。
 翌日の月山は一日中、厚い雲がまとわりついたままだった。八合目駐車場から弥陀ヶ原を抜け、仏生池小屋を経て山頂へ。下山は牛首からスキー場のリフト上駅に下り、リフトを使って姥沢口へ縦断コースをたどる。ガスの中にハクサンジャジンの青やハクサンフウロの赤紫、トウゲブキ、ニッコウキスゲの黄色がボーッと浮かぶ。白のハクサンイチゲもガスの中に埋没しまいと背伸びをするように顔を天に向け、存在感を見せていた。
 月山神社本宮のある、なだらかな山頂の広々とした草原は、まさに花盛りだった。ガスで全体が見渡せないだけに、幻想的な光景が一段と強調されて見えた。
 深田久弥は「日本百名山」の中で月山について「優しく―それが月山である。北の鳥海の鋭い金字塔と対照するように、それは優しい」と記した。鋭い岩峰を持つ鳥海山も、優しい山容の月山も花の名山であることに異論を挟む余地はなかった。

(O.K=静岡市在住)

鳥海山特産種のチョウカイフスマ

花で埋まる登山道脇の斜面


登山道脇を飾るニッコウキスゲ

かわいいウサギギク

清楚なイワイチョウ

弥陀ヶ原から月山本宮を目指す

背伸びするように天を向くハクサンイチゲ

ハクサンフウロがきれいな月山山頂直下の花畑

おとな派 一覧仕事学ぶ健康・安心暮らし環境・自然旅・食エトセトラ|読み物

携帯サイト待ち受け画像のご案内

※「寄稿・わが至福の時」掲載の山岳風景写真をあなたの携帯電話の待ち受け画像にしませんか。
「静岡新聞SBS」携帯サイトで好評配信中です。
詳しくは…

ここからバックナンバー

バックナンバー

【寄稿・わが至福の時】再訪したい山、お薦めの山(2) 2010/08/06  
【寄稿・わが至福の時】再訪したい山、お薦めの山(1) 2010/07/06  
【寄稿・わが至福の時】佐渡島トレッキング 2010/06/14  
【寄稿・わが至福の時】GWの山歩き 2010/05/10  
【寄稿・わが至福の時】思い出の山行 スイス・トレッキング 2010/03/11  
【寄稿・わが至福の時】雪を踏みに青笹山 2010/02/15  
【寄稿・わが至福の時】静岡自慢を楽しむ賤機山縦走 2010/01/27  
【寄稿・わが至福の時】富士山の初夢を願って貫ヶ岳 2009/12/15  
【寄稿・わが至福の時】紅葉と新雪の北アルプス餓鬼岳 2009/11/06  
【寄稿・わが至福の時】眺める山、富士山 2009/09/24  
【寄稿・わが至福の時】雨と風の五竜、鹿島槍ケ岳 2009/08/04  
【寄稿・わが至福の時】梅雨の晴れ間の権現岳 2009/07/01  
【寄稿・わが至福の時】半世紀ぶりの伝付峠 2009/05/27  
【寄稿・わが至福の時】 安倍川右岸の二王山、見月山 2009/05/03  
【寄稿・わが至福の時】雪国に早春の花を求めて 新潟・弥彦山 2009/04/13  
【寄稿・わが至福の時】雪の大日ヶ岳と春の里山 2009/03/25  
【寄稿・わが至福の時】東海自然歩道を歩く 2009/03/09  
【寄稿・わが至福の時】剱岳 点の記 2009/02/06  
【寄稿・わが至福の時】干支の山「牛ヶ峰」 2009/01/13  
【寄稿・わが至福の時】「日本百名山」を登り終えて 2008/12/11  
【寄稿・わが至福の時】秋山 紅葉めぐり 2008/11/25  
【寄稿・わが至福の時】秋の陸奥に百名山と秘湯を巡る 2008/10/27  
【寄稿・わが至福の時】初秋の奥穂高岳 2008/09/24  
【寄稿・わが至福の時】利根川源流域の最高峰 平ヶ岳 2008/09/08  
【寄稿・わが至福の時】花の大谷嶺に涼を求めて 2008/08/19  
【寄稿・わが至福の時】おしょうしな、飯豊山 2008/07/28  
【寄稿・わが至福の時】岩峰の瑞牆山 2008/06/14  
【寄稿・わが至福の時】早春の戸隠高原 2008/05/29  
【寄稿・わが至福の時】ヒマラヤ・トレッキング(下) 2008/04/20  
【寄稿・わが至福の時】ヒマラヤ・トレッキング(上) 2008/04/04  
【寄稿・わが至福の時】思い出の山行(2)北岳 2008/03/11  
【寄稿・わが至福の時】思い出の山行(1)赤石岳・荒川三山 2008/02/20  
【寄稿・わが至福の時】新聞の旅広告で見つけた冬の山陽・山陰路 2008/02/05  
【寄稿・わが至福の時】正月の山伏 2008/01/08  
【寄稿・わが至福の時】師走の愛鷹連峰歩き 2007/12/15  
【寄稿・わが至福の時】小海線で行く晩秋の軽井沢 2007/11/16  
【寄稿・わが至福の時】紅葉の妙高・火打山 2007/10/19  
【寄稿・わが至福の時】憧れの雲ノ平 2007/09/26  
【寄稿・わが至福の時】山の花とシカの食害 2007/09/03  
【寄稿・わが至福の時】いで湯と花と白馬三山 2007/08/13  
【寄稿・わが至福の時】「陸奥花の山旅」 2007/07/17  
【寄稿・わが至福の時】「屋久島・宮之浦岳登山」 2007/06/25  
【寄稿・わが至福の時】「家庭菜園の楽しみ」 2007/06/07  
【寄稿・わが至福の時】「病膏肓に入る」 2007/05/16  
「団塊心模様」 静岡のNPO参加 ゆとり生かし地域支援 2007/05/16  
「団塊心模様」 静岡文芸大4年生 生きがいづくりに先手 2007/05/10  
【寄稿・わが至福のとき】「新潟、早春の花巡り」 2007/04/05  
【寄稿・わが至福のとき】「雪の上高地散策」 2007/03/22  
【寄稿・わが至福の時】「湖西連峰の尾根歩き」 2007/03/15  
【寄稿・わが至福の時】「沼津アルプス」 2007/02/22  
【寄稿・わが至福の時】「冬枯れの山一人歩き」 2007/02/05  
【寄稿・わが至福の時】「2007年も前向きに」 2007/01/10  
【寄稿・わが至福の時】「登山と温泉」 2006/11/28  
【寄稿・わが至福の時】「ゆったり歩きで秋山満喫」 2006/11/14  
【寄稿・わが至福の時】「錦繍の山歩き」 2006/10/24  
「団塊の明日」(4)完 堺屋太一氏インタビュー 「職縁」より同好の仲間 2006/10/18  
「団塊の明日」(3) 妻の起業、夫が後押し 役割分担に変化 2006/10/17  
「団塊の明日」(2) アルバイト 「戦力」活用には課題 2006/10/14  
「団塊の明日」(1) 退職金の投資 老後の夢にリスクも 2006/10/13