足場の悪い千蛇谷から雪渓を登り標高2000メートル近くになるとイワギキョウ、イワブクロ、アオノツガザクラ、ハクサンイチゲなどが姿を見せ、花の様相も変化する。鳥海山の特産種で絶滅危惧種に指定されているチョウカイフスマも小さな群落をつくっていた。星の形をした白い小さな花は際立って目を引くものではないが、この花を見たさに訪れる登山者も多いという。もう一つの特産種で、やはり絶滅危惧種のチョウカイアザミも登山道脇に見られたが、地味な花であった。
大物忌神社から新山山頂へはザックをデポし、両手も使っての岩登り。岩の山頂が狭いため直下は登山者の渋滞が続く。前回と同様、山頂からの展望はなく、順番待ちの記念撮影でシャッターを一枚だけ押してもらい、そそくさと山頂を離れた。
翌日の月山は一日中、厚い雲がまとわりついたままだった。八合目駐車場から弥陀ヶ原を抜け、仏生池小屋を経て山頂へ。下山は牛首からスキー場のリフト上駅に下り、リフトを使って姥沢口へ縦断コースをたどる。ガスの中にハクサンジャジンの青やハクサンフウロの赤紫、トウゲブキ、ニッコウキスゲの黄色がボーッと浮かぶ。白のハクサンイチゲもガスの中に埋没しまいと背伸びをするように顔を天に向け、存在感を見せていた。
月山神社本宮のある、なだらかな山頂の広々とした草原は、まさに花盛りだった。ガスで全体が見渡せないだけに、幻想的な光景が一段と強調されて見えた。
深田久弥は「日本百名山」の中で月山について「優しく―それが月山である。北の鳥海の鋭い金字塔と対照するように、それは優しい」と記した。鋭い岩峰を持つ鳥海山も、優しい山容の月山も花の名山であることに異論を挟む余地はなかった。
(O.K=静岡市在住)